お金の悩みにFP(ファイナンシャルプランナー)が答える連載企画。今回の相談者は、30歳の共働き家庭です。「教育資金と住宅資金の準備を両立させたい」とのご相談。相談者の事例をもとに、教育資金や住宅資金の貯め方を解説します。
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回答者・武藤貴子(ファイナンシャル・プランナー)
マネーコラムの執筆、情報発信を中心に活動するFP(AFP)、金融ライター。会社員時代の経験から、副業や起業に関するアドバイスも行う。投資や在宅でできるネット副業に詳しい。著書に『いちばん稼ぎやすい簡単ブログ副業』(河出書房新社)がある。
相談 教育資金とマイホーム資金の準備を両立させたい
子どものために、将来の教育資金を準備したい。マイホームの購入も考えています。教育資金と住宅資金の準備を両立させる方法や、家計の見直しポイントを知りたいです。
相談者プロフィール
夫 30歳 正社員 年収500万円(うちボーナス80万円)
妻 30歳 正社員 年収260万円(時短勤務中。うちボーナス40万円)
長女 2歳
都心から40分ほどの郊外に、賃貸マンション暮らし。車なし。現在の貯蓄額は約600万円。長女の小学校入学までに、マイホーム購入を検討している。夫の両親から頭金200万円の支援が受けられる予定。子どもの教育資金は、児童手当に手を付けず、そのまま普通預金に積み立てている。余裕があれば、老後資金の準備も始めたい。
1か月の家計簿 | |
---|---|
収入 | 金額 |
夫の手取り月収 | 28万円 |
妻の手取り月収 | 16万円 |
児童手当 | 2万円 |
収入合計 | 45万5,000円 |
支出 | 金額 |
---|---|
住居費 | 98,000円 |
食費 | 78,000円 |
通信費 (自宅Wi-Fi+スマホ2人分) | 18,000円 |
水道光熱費 | 23,000円 |
子ども費(保育料含む) | 60,000円 |
医療費 | 2,000円 |
死亡保険(夫) | 31,000円 |
医療保険 (夫婦2人分) | 4,00円 |
教育費積立 (子ども2人分) | 15,000円 |
小遣い(夫、妻) | 40,000円 |
その他 (日用品・被服・美容・レジャー) | 42,000円 |
支出合計 | 411,400円 |
武藤さんの4つのアドバイス
1 大学進学用の教育資金は、「つみたてNISA」も併用して積み立てよう
2 「近い将来」のための住宅購入資金。手堅く定期預金で積立を
3 老後資金の準備はiDeCo(個人型確定拠出年金)がオススメ。無理のない範囲でスタートしよう
4 家計の見直しも必要。夫の死亡保険、スマホ代が節約できそう
アドバイス1 教育資金は「つみたてNISA」で準備を
現在、毎月支給される児童手当1万5,000円を普通預金に積み立て、長女の大学進学に備えています。これ自体は問題ないですが、大学進学まではあと16年。時間の長さを利用し、投資信託も併用していきましょう。
おすすめは、非課税投資枠が使えるNISA(少額投資非課税制度)。NISAには、一般のNISA、つみたてNISA、ジュニアNISAの3種類がありますが、特に活用していただきたいのは、「つみたてNISA」です。
「教育資金の積み立てなら、ジュニアNISAでは?」と思うかもしれません。しかし、つみたてNISAには、長期投資に適した商品が揃っている、いつでも解約可能(ジュニアNISAは、原則的に、子どもが18歳になるまでは払出不可)などといったメリットがあります。いざという時は途中で現金を引き出せるつみたてNISAの特長を生かしつつ、基本的には、18歳まで続けるつもりで長期運用していきましょう。
教育資金400万円を用意するには
児童手当を使わずに貯めていくと、総額で約200万円になります。長女の大学進学までに準備したい教育資金は、400万円とのこと。つみたてNISAで残り200万円を用意するには、どうすればいいでしょうか。
たとえば、シミュレーションによると、つみたてNISAを利用し、毎月8,000円を年利3%で運用して16年間積み立てた場合、最終積立金額(元本+運用収益)は約197万になります。
児童手当の総額と合わせると、約400万円に。つみたてNISAは、月に3万3,000円まで積み立てられますが、リスク分散のため、児童手当の積み立ては今のまま普通預金で、もしくは定期預金などで貯めていきましょう。
アドバイス2 住宅資金は4年後を目標に定期預金で貯める
長女の小学校入学までにマイホーム購入を予定しているため、住宅資金(主に頭金)は4年後を目標に準備します。4年後には確実に資金が必要となりますので、投資商品ではなく、元本割れのない積立定期預金などが適しているでしょう。
マイホームの詳しい予算は未定ながら、3,800万円程度を考えているとのこと。頭金や各種手数料などの初期費用が物件価格の2割かかるとすると、単純計算では760万円となります。なお、住宅取得時には、夫の両親から200万円の支援が受けられるそう。つまり、760万円-200万円=560万円がひとまず目標金額となります。
生活防衛費を残し、計画的な積立を
現在、相談者の貯金は約600万円。これだけで初期費用をまかなえそうですが、マイホーム購入時に貯金のほとんどを使ってしまうのは危険です。収入ダウンなど不測の事態に備えるため、最低でも毎月の生活費×半年分は「生活防衛費」として残しておきましょう。現在の1か月の支出は約41万円ですので、半年分だと、41万円×6か月=246万円。少なくとも、約250万円は手元に置いておきます。
現在の貯金約600万円から250万円を引くと350万円、目標の560万円までは210万円足りない計算です。そこで、4年間で210万円を貯めるとなると、単純計算で1年あたり52万5,000円となります。
これをさらに12か月で割ると、1か月あたり4万3,750円ですが、年2回のボーナスからも拠出していいでしょう。ボーナスはカットや減額もあり得ますので、頼り過ぎは禁物です。しかし、相談者の場合、1回あたり20万円×年2回=40万円程度なら問題なさそう。残り約12万円は、毎月1万円ずつ積み立てればOKです。
アドバイス3 老後資金の準備はiDeCoで無理なくスタートしよう
教育資金と住宅資金の準備を最優先したい相談者ですが、夫婦2人の老後資金も気になっているようです。ただし、2人とも正社員で厚生年金に加入しており、将来の老後資金が大幅に不足する、という状態にはありません。そこで、まずは夫または妻のみ、iDeCoで積立を考えてみましょう。
iDeCoは、月5,000円から積み立て可能で、年に1度、掛金額を変更することができます。まずは、最低掛金額から始め、長女の保育料(月約5万円)がかからなくなる2年後から増額(夫、妻ともに月の掛金額の上限は2万3,000円)、また、夫婦そろっての加入を考えましょう。
アドバイス4 夫の死亡保険とスマホ代を見直す
特に大きな無駄遣いなどは見られない相談者の家計ですが、夫の死亡保険とスマホ代が節約できそうです。死亡保険は、ネット保険への乗り換えで4,000~5,000円程度抑えられるでしょう。
さらに大きく下がりそうなのは、スマホ代です。現在、月に1万円程度かかっていますが、在宅勤務も多く、外でのスマホ使用頻度は大幅に減っているそうです。妻は、産休を機に格安スマホに乗り換えて、月のスマホ代は約3,000円。夫も同じプランにすれば、7,000円の節約になります。
家計見直しと貯める仕組み作りで目標達成できる
現状では、毎月の貯金は多くありませんが、2年後には保育料が無償となり、家計負担が大きく減ります。さらに、いずれ妻が時短勤務でなくなるなら、収入が増えて余裕ができるでしょう。ボーナスから多く貯蓄できている点も評価ポイントです。
第2子を考えるなら再度プランの立て直しが必要ですが、家計を少し見直せば、教育資金も住宅取得も問題なく準備できそうです。あとは、つみたてNISAやiDeCo、積立定期預金などを利用し、貯める仕組みを作っていきましょう。
文・武藤貴子(ファイナンシャル・プランナー)
編集・dメニューマネー編集部
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