月に1度の重要イベント「米国の雇用統計」とは?【連載 第11回】

2021/12/27 11:30

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連載「これであなたも金融通 経済ニュースの読み方入門」第11回 今では世界中のニュースをほぼリアルタイムで読むことができますが、金融や経済のニュースは難しい言葉も多く、「結局このニュースを資産運用にどう活かせば良いのか分からない……」という人も多いでしょう。 本連載では資産運用初心者向けに、経済ニュースをどのように読み

連載「これであなたも金融通 経済ニュースの読み方入門」第11回

今では世界中のニュースをほぼリアルタイムで読むことができますが、金融や経済のニュースは難しい言葉も多く、「結局このニュースを資産運用にどう活かせば良いのか分からない……」という人も多いでしょう。

本連載では資産運用初心者向けに、経済ニュースをどのように読み解いていけば良いか解説していきます。

21マスのうえで、4人のプレイヤーが動いている金融市場

この連載を通じて「金融市場」と呼ばれるものの正体は、21マスのうえで、4人のプレイヤー(中央銀行、金融機関、機関投資家、個人投資家)によって行われるマネーの動きそのものと説明しています。21マスは以下の通りです。


米国 欧州 日本 中国 新興国
為替 1 5 9 13 17
債券 3 6 10 14 18
株式 3 7 11 15 19
不動産 4 8 12 16 20
商品 21

本連載にて、中央銀行はマネーの量を調節できる特別なプレイヤーであり、いま市場関係者が最も注目しているニュースのひとつは「テーパリングや利上げなどの金融引き締めの開始時期」だと再三述べてきました。

そのようななか、2021年8月下旬にジャクソンホール会議と呼ばれるシンポジウムにて、パウエルFRB議長が「経済が予想通り進展した場合、年内に資産購入ペースの縮小(テーパリング)を始めるのが適当」という旨の発言をしました。「経済が予想通り進展」とはどのようなことを指すのでしょうか。

ひとつに絞ることはできませんが、大きな要因が「雇用」です。それを見ていくにあたり、FRBはじめ多くの市場関係者が注目しているのが「雇用統計」という指標です。今回は、この「雇用統計」について紹介していきましょう。

雇用統計とは?

雇用統計とは、米国の雇用情勢を調べた経済指標のことで、基本的には毎月第一金曜日に、米国労働省から発表されます。様々な指標が発表されますが、特に注目されているのは失業率、非農業部門雇用者数、平均時給などです。

実は、失業率には全部で6種類あって、それぞれ対象とする範囲が違います。通常、失業率と呼んでいるのは「U3失業率」というものです。最も広義な失業率は「U6失業率」と呼ばれており、FRBも重要視していると言われています。ただ、資産運用初心者においては、あまりこれらは気にせず、まずは雇用統計ニュースの大きく書かれている失業率をチェックすれば良いでしょう。

米国の雇用統計は経済環境に強く連動する

当然、日本も雇用に関する統計を発表していますが、米国ほど注目されていません。なぜでしょうか。本連載で再三述べたように、経済の中心地は米国なので、そもそも米国は注目される存在であることに加えて、米国ならではの背景も関係しています。

ご存知の方も多いと思いますが、米国は˜雇用の流動性が高く、日本に比べて比較的解雇が容易です。一般的に、不景気になると、経営者は一定数の従業員を解雇して事業を縮小します。そのため、米国の雇用統計は、経済環境に強く連動します。したがって、雇用統計は重要視されているのです。

実際の動きを確認してみましょう。コロナがまだそこまで騒がれていなかった2020年2月の失業率は3.5%でした。極めて雇用環境は良く、米国経済は順調だったと言って良いでしょう。しかし、コロナに対するロックダウンが行われた2020年4月は14.7%まで跳ね上がりました。

毎月第一金曜日(10月は8日)の翌日は雇用統計ニュースをチェックしよう

その後、失業率は右肩下がりとなり、2021年7月は5.4%でしたが、コロナ前の水準には達していません。コロナ前の3.5%まで戻るのは難しいと思いますが、今後も雇用が順調に拡大していけば、年内に資産購入ペースの縮小(テーパリング)を始めることになるでしょう。

もちろん、雇用統計が全てではありませんが、雇用が拡大するということは、消費者の懐が暖かくなり、消費が活発になりやすいということです。第6回で述べたように、米国のGDPの約7割は個人消費です。ここからも雇用統計がいかに重要な指標であるか分かります。

雇用統計は基本的に、毎月第一金曜日に発表されます。10月8日の午後9時半ごろの見込みです。翌日の土曜日に新聞やニュースサイトを見れば、何かしらの記事が見つかるはずです。毎月欠かさずチェックするようにしましょう。

文・菅野陽平(ファイナンシャル・プランナー)
編集・dメニューマネー編集部

金融市場は「4人のプレイヤー」が「21マス」の中で動くゲームと考えよう

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