牛丼業界では「すき家」が一人勝ちの様相だ。「松屋」は事実上の値上げに踏み切り、吉野家の運営会社は経常利益で赤字を計上。一方、すき家は客数が順調に回復し、悪いニュースがあまり出てきていない。なぜ今、すき家が強いのか?
上期の客足、すき家はすべての月で前年比増
以下の表は、各牛丼チェーンにおける月次売上高の前年同月比(%)の推移だ。2021年の上期(4〜9月)のすべての月において前年同月比で100%を超えているのは、すき家だけだ。
2021年4〜9月にかけての前年同月比売上高の推移 | |||
---|---|---|---|
チェーン | すき家 | 吉野家 | 松屋 |
2021年4月 | 116.1% | 89.9% | 108.9% |
2021年5月 | 119.4% | 99.4% | 112.2% |
2021年6月 | 109.0% | 99.6% | 98.8% |
2021年7月 | 109.0% | 95.9% | 95.5% |
2021年8月 | 100.4% | 107.3% | 96.1% |
2021年9月 | 103.1% | 102.2% | 92.6% |
(出典:各社公式サイト)
吉野家は8〜9月にかけては前年同月の実績を上回る形となっているが、上期の前半が振るわなかった。逆に松屋は上期の前半は好調だったが、後半にかけて大きく失速している。
「立地」で明暗が分かれる結果に
すき家の売上高が前年同月比でプラスなのは、郊外での出店に力を入れているからだ。ドライブスルーが可能な郊外のロードサイド店は、コロナ禍の第5波の中でも客が遠のかなかった。ドライブスルーは感染の不安を抱かれにくいからだ。
一方、吉野家と松屋は繁華街やオフィス街にある店舗が多い。外出自粛ムードが広がり、リモートワークも推奨される中、普段人通りが多いエリアに位置する店舗では、思うように客足が戻らなかった。
実質値上げに踏み切った松屋が心配
松屋は上期後半の客数のダウンが顕著だが、下期はさらに状況が悪化する可能性がある。9月に「牛めし」の事実上の値上げに踏み切ったからだ。
関東地方において380円で販売されていた「プレミアム牛めし」と、関東以外において320円で販売されていた「牛めし」を、品質を統一して両方を「牛めし」とし、価格を一律380円にした(※いずれも「並盛り」の価格)。食材価格が上がったことなどが理由だ。
本業の利益を示す経常利益でも……
牛丼チェーン3社の運営会社の通期業績を比較すると、本業の利益を示す「経常利益」が最も大きかったのが、すき家を展開するゼンショーホールディングス <7550> であることにも注目したい。122億1,500万円を計上している。一方、吉野家HD<9861>は19億6,400万円の赤字だ。
運営企業の経常利益の比較 | |
---|---|
企業 | 経常利益 |
ゼンショーHD | 122億1,500万円 |
吉野家HD | ▲19億6,400万円 |
松屋フーズHD | 3,300万円 |
つまり、上期の売上からみても、価格競争力からみても、運営会社の経常利益の点からみても、今のところすき家が優位だというわけだ。
ただし、牛丼業界は時期によって勝ち負けがころころ変わる。下半期にはすき家が優位の状況ががらっと変わる可能性もなくはない。
文・岡本一道(経済ジャーナリスト)
編集・dメニューマネー編集部
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