日本で一番価値が高い紙幣と言えば、誰もが「1万円札」と即答できる。しかしかつて、1万円よりも高額な紙幣を発行するべきだと、ある議員が国会で意見を述べたことがあるのをご存じだろうか。1981年のことだ。
「5万円札」の発行を意見した政治家・小沢貞孝氏
国会で高額紙幣について意見を述べたのは、衆議院議員を当時務めていた故・小沢貞孝氏だ。具体的には1980〜1981年にかけて開かれた第94回国会において、「5万円札を発行すべきである」と意見している。
小沢氏はなぜ5万円札が必要だと意見したのか。小沢氏の見解の1つは「銀行や現金を多額に扱って取り引きするところでは、それ(※編注:5万円札のこと)を渇望している」というものだ。
また、銀行券の発行高構成比において、最高紙幣である1万円札の構成比が高すぎるとも指摘している。当時、日本の1万円札の構成比は83.7%。一方、アメリカでは100ドル札の構成比は34.9%。小沢氏は、最高紙幣の構成比がこんなに高い日本は異常だと主張した。
小沢氏はこうしたことを根拠に、当時は500円硬貨の発行に関する法案が審議されていたが、「500円硬貨もさることながら、1万円紙幣より高額な紙幣を発行することの方が急務ではないか」と疑問を投げかけている。
当時の中曽根大臣は「発行する考えはない」と答弁
こうした小沢氏の提案に、政府側はどう答弁したのか。
国務大臣を当時務めていた故・中曽根康弘氏は「政府としては、現在のところ、五万円札を発行する考えはない」と述べている。一方、5万円札の発行について「(銀行などでは)事務の合理化に資する」と理解は示している。
いずれにしても、小沢氏が掲げた5万円札構想は実現せず、現在までに1万円札を超える高額紙幣が日本で流通したことはない。そして今後も、1万円札を超える高額紙幣はなかなか登場しにくいと考えられる。
その理由は、国はキャッシュレス化を進めているからだ。キャッシュレス化を進めているのにさらなる高額紙幣が登場すると、その流れに水を差す。
世界的には高額紙幣は廃止される流れ
世界では高額紙幣が廃止の流れにある。犯罪などに使われがちであること、キャッシュレスの流れがあることなどが理由だ。シンガポールでは1,000シンガポールドル札(日本円で約8万3,000円)の発行が2021年1月に停止され、欧州では500ユーロ札(日本円で約6万5,000円)の廃止が決まっている。
ちなみにアメリカでは100ドル札の廃止論を唱える声もあり、もし実際にアメリカで100ドル札が廃止されたら、日本でも高額紙幣どころか、1万円札が使われなくなる日も来るかもしれない。
文・岡本一道(経済ジャーナリスト)
編集・dメニューマネー編集部
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