筆者は現役の銀行員ですが、窓口では亡くなった人の預金口座をめぐり、「出せ」「出せません」という押し問答がしばしば繰り広げられていました。預金名義人の死亡を知れば、銀行は即座に口座を凍結します。もし、親族が亡くなったとき、口座はどうなるのでしょうか。事前にどのような対策が必要なのでしょうか。
情け容赦なく口座は凍結される
銀行が口座を凍結したら、たとえ親の預金口座であっても引き出せません。電気やガス、水道料金の口座引落も停止されます。
亡くなった時点で、預金は相続人全員の共有財産となり、銀行はたとえ相続人からの要請であっても、必要な手続き無しには預金を払い出せなくなります。
凍結された口座から預金を引き出すにはどうすれば良いのでしょうか。
一般的に次の書類の提出を求められます。
・遺産分割協議書
・遺言書
・相続人全員の印鑑証明書
・相続人全員の戸籍謄本
つまり遺産分割が終わるまで口座は凍結されたままなのです。
民法改正で手続きが柔軟化されました
遺産分割協議が整うには数ヵ月かかることも珍しくありません。親族が遠方にいたり、仲が悪かったりといろいろ事情があるからです。そして、遺産分割がうまく進まず、争いに発展することもよくあります。
多くの人がこの問題に頭を抱えていました。そこで、2018(平成30)年の民法改正で遺産分割前でも一定の範囲内で葬儀費用や生活費の支払いを受けられるようになりました。以前のように銀行窓口で不毛な押し問答を繰り広げる必要はなくなったのです。
「相続」を「争族」にしないためにしておくべき3つのこと
現在は凍結口座から預金の一部を払い出すことは認められています。しかし、こうした事態に陥らないよう、相続の準備をしておく必要があります。
まず一つめは、相続財産の分割方法を明確にしておくこと。遺言書の作成が望ましいです。
次に相続人の当面の生活費や納税資金を確保しておくことです。生命保険を利用すれば死亡保険金は保険金受取人の請求により速やかに支払われるので、すぐに現金を確保できます。
最後に、相続財産の評価を把握しておくこと。そもそもどれだけの相続税が課税されるかを知らなければ対策ができません。
相続準備というと、節税に目が行きがちです。相続はお金持ちだけの問題ではありません。むしろ、無関心な人ほど「相続」が「争族」へと発展することが多いのです。「相続」を「争族」にしないポイント。それはいかに渡すか。そして、いかに分けるかです。事前に相続について話し合っておくことが最大の相続準備なのです。
文・高村阿木夫(現役銀行員のマネーライター)
編集・dメニューマネー編集部
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