「社長、またベンツ乗り替えたんですか」
銀行員が取引先を訪問した際、よくこんな会話が聞かれます。次々と新車のベンツを乗り替える社長は羽振り良く見えますが、その背景にはそれなりの理由があるのです。
経営者にとってのベンツとは
冒頭の銀行員の発言に、経営者はこんな感じで返します。
「節税だよ。ベンツだったら売るときも高く売れるから良いんだよ」
経営者の間では、ベンツが節税アイテムとして認識されていることは間違いありません。個人で車を買うには貯金を取り崩したり、ローンを利用したりします。
しかし、法人や個人事業主が車を買う場合には事情が異なります。車は税法上、固定資産として一定の条件で減価償却を行います。減価償却費が計上され、会社の利益が減少することで節税につながるという仕組みです。
しかし、銀行員としてこのスキームを検証すると、必ずしも節税できる訳ではないのです。
「ベンツ」である必要はない
もし、社長のベンツが高い値段で売れたら、売却益が発生し税金を払うことになります。安くしか売れなければ、節税はできても回収できる金額は少なくなります。
このように、ベンツで節税というのは必ずしも思い通りにはならないのです。実際には税金の支払いを先延ばしするだけなのです。そして、ベンツでなければならない理由もありません。ポルシェでもクラウンでも良いのです。
銀行員は決算書をどう見ているのか
銀行員は取引先の売上や利益を確認しますが、固定資産や減価償却の明細にも目が行きます。そこには事務所や工場、機械設備だけではなく、社長が乗っている車も記載されています。そこから見えてくるのは、「経営者の人間性」です。
業績の悪い企業では次々と車を買い替えることはできません。また、社長は次々と新車のベンツに乗り替える一方で、社員が使う営業車がボロボロでは社員の士気にもかかわります。案外こんなところに経営者の人格が表れるのです。だからこそ、私は決算書の固定資産や減価償却が気になります。
決算書の固定資産や減価償却を眺めていると、売上や利益には表れない経営者の想いが浮かんできます。「節税」という言葉は周囲の理解を得るための“言い訳”なのかもしれません。
文・高村阿木夫(現役銀行員のマネーライター)
編集・dメニューマネー編集部
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(2021年10月19日公開記事)
