相続は実に残酷です。銀行員として多くの相続に関与してきました筆者の本音です。
特に感じるのは、妻が夫の親つまり義父母を、長い間、献身的に介護しても1円の遺産も相続できないというケース。そんな残酷なことはよく起きます。
ただ、相続で悔しい思いをしないためにできることが、たった一つあります。
実は嫁は「他人」です
意外に思われるかもしれませんが、義父母と同居し、どんなに献身的に介護を行っても、遺言がないと、嫁は義父母の遺産を受け取れません。民法がそう規定しているからです。
現実には、義父母の介護にはさまざまな犠牲がともなっているはずです。経済的な負担のみならず、仕事のキャリアをあきらめざるを得ないということもあるでしょう。
にもかかわらず、民法では嫁は相続人ではないのです。
明治から家族観は変わらない でも最近、民法は変わった
家族のあり方や、相続の方法を定めている民法が作られたのは1896(明治29)年。現在でもその根幹は受け継がれたままなのです。明治時代に作られた法律によって相続が規定されているなんて驚きです。
しかし、2018(平成30)年、民法が改正されました。その結果、嫁は介護による貢献を金銭で請求できるようになったのです。当事者間で協議ができなければ家庭裁判所に申し立てることもできます。
ただし、残念ながら無条件に権利が認められるわけではなく、「請求できるようになった」だけ。まだまだ十分とは言えません。
相続人でなくても遺言があれば遺産を受け取れます。養子縁組により相続人にもなれます。しかし、実際にはそう簡単にことは進みません。だからこそ、自ら権利を主張することを想定しておく必要があります。そして「準備」が必要です。
悔しい思いをしないためにやっておくべきたった一つのこと
その準備、「やっておくべき一つのこと」とは、「記録を残しておく」ことです。
たとえば介護用品などを購入したら、レシートを必ず保管しておいてください。介護日記をつけておくことです。いつ、どのくらいの時間をかけて、どんなことをしたのか。こうして介護の事実を証明できるようにしておくのです。
相続は残酷です。献身的な努力をしていれば、何も言わなくても報われる──とは限りません。後々、自分の権利を主張するためには、証拠をしっかりと残しておくことです。残念ながら、嫁は相続人ではなく「他人」扱いなのです。
文・高村阿木夫(現役銀行員のマネーライター)
編集・dメニューマネー編集部
【関連記事】
・全国でガソリンが一番高い県はどこ?
・初心者向け!ネット証券オススメランキング(外部サイト)
・あの有名メーカーもコロナ倒産……負債額ワースト5
・株主優待をタダ取りする裏ワザとは?(外部サイト)
・10月から時給と月給、給料が上がる人とは?
(2021年10月20日公開記事)