「仮想通貨(暗号資産)のほうが株より儲かるんじゃないの?」──。銀行員として金融商品の販売にたずさわっていると、こう言われることはよくあります。たしかに儲かるかもしれませんが、むしろ仮想通貨は儲かったときのほうが恐いと思います。私が仮想通貨取引をすすめない3つの理由をお話します。
理由1 利益が出ても喜べない高い「税率」
株や投資信託は一律、20.315%の税率で課税されるだけですが、ビットコインなど仮想通貨取引の利益は「雑所得」。所得が多くなるにつれ、5%から45%まで段階的に税率が上がり、思いもよらぬ高い税金を払う羽目になってしまうことがあります。
これは盲点ですが、サラリーマンやOLは、給与所得に雑所得が加算された金額で税率が決まります。例えば、給与所得が500万円なら税率は20%です。仮想通貨取引で500万円の所得が出ると、合計所得額は1000万円となり、税率は一気に33%へと跳ね上がります。さらに住民税も上乗せされます。
理由2 相殺も繰越も出来ない「不自由さ」
仮想通貨取引では確定申告で税金を納めます。株式などほかの金融商品では、源泉徴収されて原則として申告の必要がないので、仮想通貨取引は手間と労力が必要ということです。
株式投資のベテランは、利益と損失を相殺する「損益通算」や、損失を3年間繰り越せる「繰越控除」などをうまく使って、節税しています。塩漬けになっている銘柄を損切りすることで、納税額を低く抑えられるのです。
理由3 未成熟な市場ゆえの予期せぬ「リスク」
仮想通貨には、ほかの金融商品にはないリスクがあります。取引所や仮想通貨を保管するウォレットがハッキングされ、資産が流出する事件も起こっています。金融庁から業務改善命令を請けたものの、対応できずに破たんに至った取引所もあります。
最悪の場合、投資した資金を失うことはもちろん、資金の返却に時間がかかり売買の機会を失う可能性があります。仮想通貨のリスクは投資家がコントロールできないことに加え、事前に予想できないものが多いのも特徴です。市場そのものがまだまだ未成熟なことが大きな要因です。
歴史が浅いがゆえに仕組みや環境が整っていない
仮想通貨取引をおすすめしない理由は、歴史が浅く、取引制度や税制、投資家保護の体制が実態に追いついていないことです。
もし仮想通貨に投資するなら、未成熟な市場で起こる予期せぬリスクに耐えられる余裕が必要です。
文・高村阿木夫(現役銀行員のマネーライター)
編集・dメニューマネー編集部
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