日本の医療費は基本的に「3割負担」。ひと昔前の「1割負担」よりは重くなっているが、それでもアメリカに住む筆者からすると、とてもリーズナブル。自由診療でない限り、突拍子もない請求を受けるということはないだろう。
しかし、アメリカでは病院からびっくりするような高額の請求書が後日届いたというのはよくある。米国在住の筆者も数年前、筆者は胸にしこりが見つかり、乳がんの疑いでMRI検査を受けた際、1ヵ月後に約11,000ドル(約125万円)という請求書が届いたことがある。
「サプライズビル」が届く恐怖
請求書を見ても、保険会社が医療費交渉もしておらず、保険の適用を拒否していた。筆者も支払いを拒否して調査を求めた。病院側が保険会社に医学的診断名を告知していなかったことが分かった。
3〜4ヵ月かけて、保険会社に病院と医療費交渉してもらい、夫の勤務先の団体プランに加入していたのでそれを適用してもらうことができ、最終的に支払ったのは約300ドル、約3万3,000円だった。
アメリカの仕組みでは、医療費は当日に病院で支払うことはない。まず病院が一旦患者が契約する民間保険会社に請求し、保険が適用されない場合や免責部分を患者に請求する。
病院が決めた医療費が高額な上に、保険の内容が充分でない場合は、保険会社は理由をつけて支払いを拒否する場合がある。
だから患者は病気のほかに「サプライズビル」(驚くような額の請求書)の解決に頭を悩ませなくてはならない。
医療格差も当たり前のアメリカ
「アメリカの医療費は高い」というのはよく聞くことだろう。WHO(世界保健機関)によれば、1人あたりの医療費自己負担がアメリカは1,148.32ドル(約13万円、2018年のデータ。以下同)。日本は543.92ドル(約6万円)。このデータはあくまでも加重平均だが、アメリカはスイス、ノルウェーに次いで世界で3番目に高額だ。日本は27番目だ。
日本では、乳がんの疑いがあってMRI検査をした場合、3割の自己負担で1万円から1万5,000円前後請求されるケースが多いようだ。
アメリカでは、筆者のように病院の言い値が100万円以上の場合も少なくないし、保険契約の内容によっても自己負担額は2万円から40万円と大きな差が出る。
勤務先が保険料補助と充実した団体プランを提供しそれに加入しているか、高額の保険料を個人で払える人は自己負担額が軽くなるし、手厚い治療、詳しい検査が受けられる。無保険の人は医療機関の言い値を全額支払わなければならず、治療を諦めたり、医療破産したりということも珍しくない。
昔、筆者の周りに、「保険に加入するか否かは個人の自由と責任だ。自分で責任を取れない人の面倒をなぜ国が見なくてはならない」と発言したアメリカ人がいた。自己責任の重みが日本とはまったく違うのだ。
文・美紀ブライト(米国在住のフリーライター)
編集・dメニューマネー編集部
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(2021年10月23日公開記事)