連載「これであなたも金融通 経済ニュースの読み方入門」第12回
今では世界中のニュースをほぼリアルタイムで読むことができますが、金融や経済のニュースは難しい言葉も多く、「結局このニュースを資産運用にどう活かせば良いのか分からない……」という人も多いでしょう。
本連載では資産運用初心者向けに、経済ニュースをどのように読み解いていけば良いか解説していきます。
21マスのうえで、4人のプレイヤーが動いている金融市場
この連載を通じて「金融市場」と呼ばれるものの正体は、21マスのうえで、4人のプレイヤー(中央銀行、金融機関、機関投資家、個人投資家)によって行われるマネーの動きそのものと説明しています。21マスは以下の通りです。
米国 | 欧州 | 日本 | 中国 | 新興国 | |
---|---|---|---|---|---|
為替 | 1 | 5 | 9 | 13 | 17 |
債券 | 3 | 6 | 10 | 14 | 18 |
株式 | 3 | 7 | 11 | 15 | 19 |
不動産 | 4 | 8 | 12 | 16 | 20 |
商品 | 21 |
前回(第11回)にて、「米国の雇用統計は重要な経済指標であり、毎月第一金曜日の翌日は雇用統計ニュースをチェックしよう」と述べました。もちろん、今月も第一金曜日(2021年9月3日 金曜日)に2021年8月の雇用統計が発表されました。
非農業部門の就業者数は23万5000人増にとどまり、市場予想に大きく届きませんでしたが、失業率は前月より0.2ポイント改善した5.2%、平均時給も0.1ドル上昇した30.7ドルであり、「総じて言えば、そこまで悪くない内容だった」という意見がコンセンサスになっているようです。今後も米雇用統計は毎月チェックしてみて下さい。
単純作業員になるだけで33万円もらえる?
その雇用統計発表の約10日後にも、米国の雇用が堅調であることが伺えるニュースが飛び込んできました。「Amazonが物流拠点で12万5000人を雇用する」といったニュースです。
ニュースの驚くべき点は、12万5000人という人数に加えて、「一部地域では契約時に一時金3000ドル(約33万円)を支払う」ということでしょう。上記の日経新聞記事には「昨秋は入社時に支払う一時金は最高1000ドルだった。労働市場の引き締まりを反映し、採用コストは大幅に上昇したことになる」と書いてあります。
平均時給は18ドル(約2000円)ということで、物流や配送の単純作業を行うブルーカラー職種の求人だと思いますが、一部の地域限定とはいえ、就職するだけで約33万円がもらえるわけです。反対に言えば、Amazonクラスであっても、そこまでお金を出さないと労働者が集まらないということです。デルタ株が猛威をふるっているとはいえ、いかに米国の雇用環境が好調であるかを表すニュースです。
どれくらいの雇用がどのような条件で募集されるのか
以前、「個別企業のニュースはマクロ経済に与える影響は少ないので、相対的に重要度は下がる」と述べましたが、Amazonのような巨大企業が新規雇用や労働条件について発表する場合は、しっかりと中身を確認したいところです。「Amazonがどうこう」というよりも、「どれくらいの雇用がどのような条件で募集されるのか」ということが重要です。その条件の濃さによって、ある程度の雇用状況が推し量れるからです。
Amazonに限らず、大手小売の雇用に関するニュースも抑えておきましょう。例えば、以下のようなニュースです。ウォルマートは従業員56万5000人超を対象(すごい人数!)に、時給を少なくとも1ドル引き上げると発表しました。過去1年間で3回目となる賃上げ(すごいペース!)を通じて、同社の米国内の平均時給は16.40ドルになるそうです。
「リストラ系」のニュースも確認しよう
ポジティブなニュースだけではなく、「リストラ系」のニュースも確認しましょう。最近はあまり目にする機会はなくなりましたが、例えば「大手自動車会社の○○が△△工場の閉鎖するため、XX万人を解雇する」といったニュースです。
前回も述べたように、雇用の流動性が高い米国において、大きく雇用が動くニュースは重要です。「金融市場の王様」である米国のGDPの約7割は個人消費であり、雇用状況によって経済が大きく左右されるためです。雇用関係のニュースは抑えていきましょう。
文・菅野陽平(ファイナンシャル・プランナー)
編集・dメニューマネー編集部
【関連記事】
・全国でガソリンが一番高い県はどこ?
・初心者向け!ネット証券オススメランキング(外部サイト)
・あの有名メーカーもコロナ倒産……負債額ワースト5
・株主優待をタダ取りする裏ワザとは?(外部サイト)
・10月から時給と月給、給料が上がる人とは?
(2021年10月25日公開記事)