「恒大集団デフォルト懸念」は連鎖的な悪影響を注視せよ【第13回】

2021/12/27 07:45

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これであなたも金融通 経済ニュースの読み方入門 第13回 今では世界中のニュースをほぼリアルタイムで読むことができますが、金融や経済のニュースは難しい言葉も多く、「結局このニュースを資産運用にどう活かせば良いのか分からない……」という人も多いでしょう。 本連載では資産運用初心者向けに、経済ニュースをどのように読み解いて

これであなたも金融通 経済ニュースの読み方入門 第13回

今では世界中のニュースをほぼリアルタイムで読むことができますが、金融や経済のニュースは難しい言葉も多く、「結局このニュースを資産運用にどう活かせば良いのか分からない……」という人も多いでしょう。

本連載では資産運用初心者向けに、経済ニュースをどのように読み解いていけば良いか解説していきます。

21マスのうえで、4人のプレイヤーが動いている金融市場

この連載を通じて「金融市場」と呼ばれるものの正体は、21マスのうえで、4人のプレイヤー(中央銀行、金融機関、機関投資家、個人投資家)によって行われるマネーの動きそのものと説明しています。21マスは以下の通りです。


米国 欧州 日本 中国 新興国
為替 1 5 9 13 17
債券 3 6 10 14 18
株式 3 7 11 15 19
不動産 4 8 12 16 20
商品 21

前回(第12回)の執筆後、金融市場に大きなニュースが入ってきました。中国の不動産大手、中国恒大集団(チャイナエバーグランデ)の債務不履行(デフォルト)懸念です。負債総額が約2兆元(約33兆4,000億円)にのぼることは繰り返し報じられており、人々が恒大集団の本社に押しかけて、「カネ返せ!」と叫んでいる映像を見た人も多いでしょう。

恒大集団は中国の不動産業界を代表する大企業です。世界中の企業を売上高でランク付けする「FORTUNE Global 500 2021年版」では122位にランクインしています。今回(第13回)はこの問題について言及したいと思います。

なぜ33兆円を超える借金をしていたのか

そもそも、なぜ33兆円を超える借金をしていたのでしょうか。33兆円と言えば、中国の名目国内総生産(GDP)の約2%に相当する額です。

恒大集団は様々なビジネスを手掛けていますが、メインは不動産開発です。土地を取得して、そこにマンションなどを建てて不動産の価値を増大させ、人々に販売し、売却益を得てきました。

土地を購入したり、マンションを建てたりするためにはたくさんのお金が必要ですが、中国の不動産市場は基本的に上昇を続けており、「なるべく早く、たくさん買ったほうが儲かる」という状態でした。そこで銀行や投資家からたくさんの資金を集めて(借りて)、それらを元手に大量の土地を購入したり、マンションを建てたりしていたわけです。

このように、他人資本(他人のお金)を使うことで自己資本(自分のお金)以上のお金を動かすことを「レバレッジ(をかける)」と呼びます。

恒大集団はレバレッジが悪い方向に作用してしまった典型例

レバレッジは、自己資本以上のお金を動かせるため、うまくいけば「自己資本だけで投資やビジネスをしたとき」に比べて大きな利益を得ることができますが、失敗したときの損失額も大きくなります。また、他人資本を集めるには基本的に調達コストや返済義務が生じますので、場合によってはそれが大きな負担となります。

恒大集団は、このレバレッジが悪い方向に作用してしまった典型例と言えるでしょう。不動産価格の上昇が一服し、中国政府が不動産会社への融資に慎重になったこともあり、恒大集団の業績は悪化しています。銀行や投資家から借りたお金の返済期限が近いのに、手元に十分な資金がないため、「返すことができないのではないか?」と心配されているのです。

中国版リーマン・ショックの始まり?

恒大集団のデフォルト懸念においては、日々新しいニュースが報道されています。この原稿が公開される頃には状況が好転しているかもしれませんし、悪化しているかもしれません。

いずれにせよ重要なことは、「もしデフォルトしてしまった場合、連鎖倒産(破産)がどれくらい広がって、大きな金融危機になるのか」ということです。率直に言えば、イチ企業の破綻はそれなりによくある話で、周囲への影響が軽微であればそこまで問題はないのですが、今回は負債額が巨額のため、やや心配な事案と言えるでしょう。

一部では「中国版リーマン・ショックの始まりになるのではないか」と危惧する声もあります。恒大集団は金融機関ではないですし、どこにどれだけのリスクアセットがあるか把握できていなかった当時とは大きく状況が異なるので、現状ではそこまでの大事にはならないと思いますが、引き続きニュースを追っていく必要があるでしょう。

文・菅野陽平(ファイナンシャル・プランナー)
編集・dメニューマネー編集部

金融市場は「4人のプレイヤー」が「21マス」の中で動くゲームと考えよう

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