新型コロナウイルスの第5波がほぼ収まったこともあり、「Go Toトラベル」再開に対する期待感が高まっている。しかし、Go Toトラベルでは思ったほど安くホテルに泊まれないことがあった。「便乗値上げ」をする宿泊施設があったからだ。また便乗値上げは起きるのか?
実質50%オフとなるGo Toトラベル
Go Toトラベルは、日本政府の旅行需要喚起策だ。ホテルの宿泊料金などが35%割り引かれ、料金の15%分を地域共通クーポンとして受け取れるため、実質的に50%オフでホテルに泊まることができる。
50%オフでホテルに泊まれるなんて、滅多にあることじゃない。そのためGo Toトラベルの期間中は、この機会にいつもより少し高級な宿泊施設に泊まろうという人が増えたが、全員が本当に安く泊まれたのだろうか。
宿泊価格が2倍になったら値引きは実質0%
Go Toトラベルで定価の実質50%オフで泊まれたとしても、ホテル側が定価を2倍にしていたら、実質的に値引きが0%になる。これが俗にいうGo Toトラベルの「便乗値上げ」だ。
具体例を挙げてみよう。1泊1万円の50%オフは5,000円だが、1泊料金が1万円から2万円に値上げされれば、当然ではあるが50%オフで1万円となる。最終的に払う料金はGo To前と変わらない。
同じように、1泊2万円の50%オフは1万円だが、1泊料金が2万円から4万円に値上げされれば、支払う料金は2万円でGo To前と変わらない。
変動料金制は宿泊業界では当たり前のこと
こうした便乗値上げは違法なのだろうか。結論から言えば、違法ではない。宿泊施設側が宿泊客の需要に合わせて料金を変えるのは、ホテル業界では当たり前のことだからだ。
この仕組みのことを「ダイナミックプライシング」(変動料金制)と呼ぶ。最近では売上の最大化に向け、AI(人工知能)に価格設定を任せる宿泊施設も増えてきた。
ゴールデンウィーク(GW)や紅葉シーズンにホテルの料金が上がるように、Go Toトラベルの開催期間中に宿泊料金が高くなるのは、ホテル業界の常識を知っていれば特に驚くべきことではないのだ。
Twitterなどで批判をする前に……
もしGo Toトラベルが再開すれば、おそらく多くの宿泊施設の宿泊価格が上がるはずだ。だからと言って、宿泊施設を頭ごなしに批判するのはやや考えものだ。しかも今は感染防止対策に費用がかかり、以前よりも余計にホテルの運営コストが増えている。
安く泊まりたい気持ちは分かるが、Twitterなどで批判を展開する前に、少し冷静になって宿泊業界の料金の仕組みを思い出した方がいいかも?
(2021年11月2日公開記事)
文・岡本一道(経済ジャーナリスト)
編集・dメニューマネー編集部
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