住宅ローンは変動金利と固定金利を選べます。どちらが良いのか迷わない人はいないと言っても過言ではないでしょう。銀行員として多くの申し込みを見てきた筆者は、今からローンを組むなら変動金利のほうがいいと考えています。それはなぜでしょうか。
固定金利は金利上昇に強いというのは本当か?
一般的に、金利が上昇するときには、変動金利より固定金利が得と考えられていますが、必ずしもそうとは言えないというのが結論です。
変動金利と固定金利で総支払額がどれくらい違うのでしょうか。以下の想定で比較してみましょう。
借入残高 3000万円、借入期間 35年
・元利均等返済
・ボーナス払いなし
・2021年10月現在の三菱UFJ銀行の下限金利適用。
・銀行の手数料や抵当権設定費用など合計90万円の諸費用が必要
30年間金利が変動しなければ、それぞれの適用金利と支払金額は次の通りです。
金利 | 総支払額 | |
---|---|---|
変動金利: | 0.475% | 約3309万円 |
10年固定 | 0.690% | 約3509万円 |
固定金利の適用金利が高い分だけ総支払額が増えることになります。
将来、金利が上昇すると仮定します。5年後から5年ごとに0.25%ずつ金利が上昇する仮定します。25年間で金利は1.255%上昇することになります。その場合の総支払額は次の通りです。
変動金利……約3497万円
固定金利……約3706万円
よほど意図的に特殊な条件設定を行わない限り、実は変動金利のほうがお得というのがシミュレーションの結果です。
銀行員が変動金利をすすめる理由
そもそも変動金利のほうが適用金利が低いので、ある程度金利が上昇しても総支払額が逆転することはありません。しかし、私が変動金利をおすすめする理由はそれだけではありません。
データが公開されている三井住友銀行の例ですが、2009年1月から10年以上も変動金は動いていないのです。これは変動金利のベースとなっている指標が固定金利とは異なるからです。変動金利のベースとなっている短期プライムレートは銀行の営業政策上決定される金利であり、市場の金利動向とは異なるため、こうした現象が起きます。
変動金利に死角はないか?
実際にどれくらいの人が変動金利を選んでいるかというと、統計的には約60%の人が変動金利を選んでいます。金利が上昇しそうになったら固定金利への変更を考えようという人が大半です。
変動金利から固定金利へはいつでも切り替えられます。逆に固定金利から変動金利への変更は、“固定期間中は”できません。
また、住宅ローンの審査の要件に返済比率があります。年収に占める年間返済額の比率ですが、金利の低い変動金利の方が比率が低くなり審査に有利であることも少なからず影響しています。
もちろん、絶対はありません。想定できないような状況が実際に起こる可能性もあります。しかし、現状では固定金利を選択するのは、どうしてもこだわらなければならない特殊な事情がある人ということになります。
(2021年11月2日公開記事)
文・高村阿木夫(現役銀行員のマネーライター)
編集・dメニューマネー編集部
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