年末になると、子供や孫の通帳へ預金を移そうとする人が銀行の窓口へやってきます。親心でもありますが、やり方次第では「脱税の疑い」があるとして、税務署の調査対象や追徴課税の対象になることすらあります。
親心か節税対策か
2016年、相続税が実質的に増税され、多くの人が相続の前に子供や孫に財産を移すようになりました。年間110万円の範囲であれば、非課税で財産を移すことが認められているからです。
ただし、資金移動の記録があいまいだったり、悪質な節税目的と判断されたりすると、税務調査の対象となります。その結果、過去の財産の移動も相続財産に加えられ、相続税を支払うことになったり、追徴課税の対象になったりします。
避けるべきポイント1 現金受渡の証拠が残していない
記録の残らない現金のやり取りは絶対に避けるべきです。調査が入れは、事実を裏付ける客観的な証明が必要です。そのためにも銀行振込が最も適切です。
ポイント2 子(孫)がお金もらっていることを認識していない
お金のやり取りは「民法上の贈与」という扱いです。贈与が有効に成立するためには子(孫)がもらっていることを認識していなければなりません。勝手にお金を移しただけでは贈与は成立しないというのが法律上の解釈なのです。
ポイント3 その預金は子(孫)が管理していない
子供名義の口座であっても親が通帳や印鑑を保管していれば「名義預金」になります。その場合は贈与が“有効に成立していない”とみなされます。
ポイント4 贈与契約書を作成していない
贈与契約書は必ず作らなければならないものではないですが、いきさつを税務署に説明するときに、契約書があれば贈与の事実を簡単に証明できます。それがなければ、相続の時、子供名義の口座であっても親が通帳や印鑑を保管していれば「名義預金」になります。その場合は贈与が“有効に成立していない”とみなされます。
ポイント5 毎年定期的に贈与を行っている
例えば、毎年100万円を10年間に分けて贈与した場合、贈与税はかかりません。しかし、税務署は「毎年100万円を10年間受け取る権利」を贈与したものと判断し、1000万円の贈与として課税する可能性があります。
それを防ぐためには、毎年定期的に決まった額を渡すことは避けたほうが良いでしょう。
相続対策として、贈与に対する関心が高まっています。それにともない税務面で危険な贈与がふえていることも事実です。渡す、もらうという行為には税をめぐるトラブルに発展するリスクが潜んでいることを認識しておく必要があります。
(2021年11月3日公開記事)
文・高村阿木夫(現役銀行員のマネーライター)
編集・dメニューマネー編集部
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