お金の悩みにFP(ファイナンシャルプランナー)が答える連載企画。今回の相談者は、サービス業で働く30歳の独身女性です。「結婚願望がなく、生涯独身で過ごしたい。何のためにいくら必要か、貯める方法も知りたい」とのご相談。相談者の事例をもとに、生涯を独身で過ごす場合のマネープランを解説します。

回答者・武藤貴子(ファイナンシャル・プランナー)
マネーコラムの執筆、情報発信を中心に活動するFP(AFP)、金融ライター。会社員時代の経験から、副業や起業に関するアドバイスも行う。投資や在宅でできるネット副業に詳しい。著書に『いちばん稼ぎやすい簡単ブログ副業』(河出書房新社)がある。
相談 「生涯独身で過ごしたい。何にいくら必要でどうやって貯めればいいのか」
「結婚願望がなく、生涯独身で過ごしたいと思っています。一人で生きていく場合、何にいくら必要で、どうやって貯めればいいのか教えてください」
相談者プロフィール
30歳 女性 正社員 年収300万円(ボーナスなし)
実家で両親と3人暮らし。2年前に転職を経験した。現在の貯蓄額は約200万円。結婚の希望がなく、生涯独身で過ごす予定。一人暮らしもしてみたいが、それよりも、実家暮らしを続けてできるだけ貯金をしておきたいと考えている。老後も実家をリフォームするなどして、住み続けたい。今の仕事でキャリアアップして、手取り月収をあと5万円増やすのが当面の目標。
1か月の家計簿 | |
---|---|
収入 | 金額 |
手取り月収 | 20万5,000円 |
収入合計 | 20万5,000円 |
支出 | 金額 |
---|---|
住居費(家に入れるお金) | 30,000円 |
食費(外食) | 18,000円 |
通信費(スマホ代) | 10,000円 |
医療費 | 3,200円 |
日用雑貨費 | 4,000円 |
被覆費 | 28,000円 |
美容費 | 32,000円 |
レジャー費 | 7,000円 |
交際費 | 19,000円 |
支出合計 | 151,200円 |
武藤さんの4つのアドバイス
1 生涯独身の予定なら、リタイア後のお金について考え始めよう
2 老後資金の積立はiDeCoとつみたてNISAを併用する
3 スキルを磨くための自己投資にお金を使ってみて
4 変動費の節約は優先度の低いものから手を付けよう
アドバイス1 老後を考え、まずは必要金額を知る
「生涯一人で過ごしたい」と考えるなら、まずは老後資金の準備を最優先に行いましょう。独身の場合、夫婦共働きと異なり、基本的に自分一人の収入で老後資金を貯めなければなりません。さらに、老後の住まい確保や介護費用など、独身だからこそ重点的に考えておくべき課題もあります。30歳の今から準備を始めても早すぎることはないのです。
また相談者の場合、2年前に転職するまで厚生年金に加入しておらず、現在の勤め先に企業年金制度はありません。このままだと公的年金だけでは老後資金が不足する恐れが高く、「自分年金作り」は欠かせません。
自分で準備すべき金額を計算するには?
お金を貯め始める前に、まず、老後までに自分で準備すべき金額を大まかに算出します。相談者は、65歳まで働くことを希望しているため、65歳から寿命までの必要金額を計算します(ここでは寿命を90歳と仮定)。
65歳以降の生活費は、「公的年金だけでは足りない金額×12か月×25年間」で概算できます。ただし、将来受け取る正確な年金額は現時点ではわからず、老後の生活もどのくらいお金がかかるのかイメージしにくいもの。そこで厚生年金の平均受給額(女性・65歳以上)である約10万9,000円(※1)と、60歳以上の単身無職世帯の1ヵ月の支出である約15万2,000円(※2)を用いて、老後に必要な生活費を計算してみます。
これを先ほどの計算式に当てはめると、「(15万2,000円-10万9,000円)×12か月×25年間=1,290万円」。ここに、病気やケガ、介護に備える金額として200~300万円程度、住宅のリフォーム費用として500万円程度(戸建ての場合。マンションなら300万円が目安)を上乗せします。退職金やその他老後のために使えるお金があれば、ここから差し引きましょう。
これらを踏まえて計算すると、「1,290万円(生活費)+300万円(病気やケガ、介護に備えるお金)+500万円(リフォーム費用)=2,090万円」。つまり、相談者が老後までに自分で準備する金額は、約2,100万円となります。
(※1)厚生労働省年金局「平成30年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」より
(※2)総務省「家計調査年報(家計収支編)2019年」より
アドバイス2 iDeCoとつみたてNISAで老後資金を貯める
老後までに貯めるべき金額は、決して小さいものではありません。しかしリタイアまでにはまだ長い時間あります。相談者のように老後資金をしっかり貯める必要のあるなら、「iDeCo(個人型確定拠出年金)」に加え、使い勝手の良い「つみたてNISA」も併用してダブルで積み立てるとよいでしょう。
老後資金を貯めるには、より節税効果の高いiDeCoを優先的に活用しましょう。相談者がiDeCoで積み立てられる月の上限額は2万3,000円。これを60歳まで30年間積み立て、年利3%で運用した時のシミュレーションでは、合計金額(積立元金+運用益)は1,340万円となります。
一方、つみたてNISAの毎月の積立上限額は3万3,000円。これを非課税期間の最長まで20年間積み立て、同じく年利3%で運用したとすると、合計金額は1,083万円になります。iDeCo分と合わせると、2,423万円を準備できる計算となり、目標である2,100万円をクリアします。
ただし、将来介護を頼める身内がいないことを想定するなら、これに介護費用を500万円程度は上乗せしたいところ。また、受け取る年金額が少ない場合、自分で準備しておく金額はさらに大きくなります。実際の年金受取額に照らし合わせたプラン見直しは、必須でしょう。
アドバイス3 キャリアアップを目指すなら収入の1割を自己投資しよう
相談者は美容系のサービス業で働いており、新たな資格やスキルの取得により、月収5万円アップを目指しています。収入が上がれば、その分将来の生活に安心感が増しますし、人生の選択肢も広がるでしょう。そのためには、毎月消費に使う割合を少し抑え、その分手取り収入の1割程度は自己投資に使いたいところです。
老後資金の準備もしながら自己投資にもお金を使えば、その他の貯金はほとんどできません。しかし、収入アップのために「攻め」の使い方ができるのは、独身ならではの強みです。収入を上げることは、最も強力な家計防衛策にもなります。自己投資に積極的にお金を使っていきましょう。
アドバイス4 変動費は優先度の低いものから節約を
職業柄もあり、被服や美容にはお金をかけるタイプの相談者。外食や交際費にもお金を使っていて、もう少し出費を抑えたいところです。被服費や美容費、交際費、食費などの変動費は、予算を設定してやりくりしますが、自分にとって優先度の低いものから削っていくとストレスなく節約できます。たとえば、「洋服や美容にかけるお金は大きく減らせないけれど、外食はしなくてもいい」と思えるなら、食費を節約しましょう。
また洋服やバッグのサブスク(月額料金を払ってレンタルできるサービス)を利用すれば、定額で毎月新しいものを使うことができます。変動費を固定費化することで家計管理が楽になりますし、何より大幅な節約につながる可能性があります。被服費がかさみがちな人には、おすすめです。
これらの変動費を月2万円抑え、あとは、プランの見直しで通信費が4,000円程度になれば、月2万6,000円の節約に。iDeCoとつみたてNISAを始め、自己投資にお金を回しても足りる計算となります。
お金の使い道を自由に決められるメリットを生かそう
独身だと自分一人の収入で老後資金を準備しなければいけない大変さがありますが、お金の使い道は自由に決められます。実家暮らしなら、なおのことです。この環境を生かし、今から計画的に将来の資金を積み立てていきましょう。
(2021年11月3日公開記事)
文・武藤貴子(ファイナンシャル・プランナー)
編集・dメニューマネー編集部
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