「お金持ちは保険に入る必要がない」。こうした考え方を耳にすることがあるが、理に適った話なのだろうか。保険本来の役割について立ち返った上で、富裕層の場合は保険に入るべきかどうか、考えてみよう。
「生命保険」の場合は?
まず残された家族の生活を守るための「生命保険」について考えてみよう。結論を先に書くと、死亡保険金で支払われる金額以上の資産があり、将来的にその資産が減らないことが確実であれば、保険に入る必要性は薄い。
例えば家族に5,000万円を残したい場合、すでに5,000万円以上の資産があるのであれば、5,000万円の死亡保障がつく生命保険にあえて加入する必要はない。
資産の大半を投資している場合、話は別
ただし、現時点で5,000万円以上の資産があっても、その資産が将来的に減る可能性がある場合は話が変わってくる。
現金で銀行に貯金し、その預金に手を付けない限り資産は減らないが、資産を株式などの有価証券に変えた場合は、資産が目減りする可能性が出てくるからだ。
そのため、将来家族に残そうと思っているお金で資産運用をしている場合は、たとえお金持ちであっても、確実に死亡保険金でお金が残せる生命保険に入るという選択肢が生まれる。
「自動車保険」の場合は?
一方、生命保険ではなく「自動車保険」の場合は、また話が異なる。
自動車保険における「対人賠償保険」では、事故で相手に傷害を負わせたり、相手を死亡させたりした際に、相手に対する治療費や慰謝料などが「無制限」で保険金として支払われるという契約が可能だ。
過去にあった死亡交通事故の裁判では、5億円以上の賠償金が認められたケースもある。慰謝料や賠償金には実質的な上限は設けられていないため、たとえお金持ちであっても、自動車に乗るなら自動車保険における対人賠償保険は加入すべき、という考え方が強い。
「医療保険」の場合はどうか?
最後に「医療保険」についても考えてみよう。
医療保険は、病気やケガで入院したり、手術を受けたりするときに、給付金が支払われる仕組みの保険だが、十分に貯金があって入院や手術の費用をまかなえるのであれば、必ずしも保険に入る必要はない。
しかも日本には「高額療養費制度」があり、一定金額以上の医療費は自己負担しなくて済むことも知っておきたい。
「お金持ちは保険不要」と一概には言えない
まとめると、「お金持ちは保険に入る必要がない」とは一概には言えないのが現実だ。
お金持ちであっても、自動車保険における対人賠償保険に加入するメリットは大きいし、資産の大半で資産運用をしている場合は、将来的に家族に残せるお金が大きく減るかもしれないからだ。
大事なことはお金持ちに限らず、冷静に保険に加入するメリットとデメリットを比較することだ。もしあなたがしばらく保険について見直しをしていないのであれば、この機会に一度、現在の契約内容などを確認してみるといいかも。
(2021年11月11日公開記事)
文・岡本一道(経済ジャーナリスト)
編集・dメニューマネー編集部
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