日本の大卒の初任給をほかの先進国と比較すると、アメリカの2分の1以下、スイスの3分の1以下になっている。平均賃金がここ20年間ほとんど上がっていない日本。大卒の初任給では隣国・韓国にも抜かれてしまっている。大卒の初任給の国際ランキングから分かることとは──。
大卒の初任給(年収)の国別ランキング
これが大卒の初任給(年収)の国・地域別ランキングだ(国・地域の区分けは出典による)。
大卒の初任給(年収)の国際ランキング | |
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初任給(年収) | 国 |
800万円超 | スイス |
600万円超 | アメリカ |
500万円超 | ドイツ |
400万円超 | ノルウェー |
300万円超 | フランス、スウェーデン、イギリス、アラブ首長国連邦 |
200万円超 | 韓国、シンガポール、日本 |
100万円超 | 台湾、中国 |
100万円以下 | タイ |
経団連による大卒の初任給調査によれば、日本の大卒の初任給は262万円となっている。ウイリス・タワーズワトソン社の調査ではスイスは800万円台後半なので、日本の額を3倍してもスイスには届かない。
ちなみにアメリカは平均632万円、ドイツは平均534万円であり、いずれも日本の2倍以上となっている。
「終身雇用や年功序列が初任給を下げている」
なぜこのような結果となってしまっているのか。ウイリス・タワーズワトソン社は、日本の終身雇用が前提の雇用制度が初任給を低水準にとどまらせていると指摘している。
終身雇用を前提として人材を採用する企業の場合、年功序列で給与が決まるケースが多い。年功序列だと、勤務年数が若いうちはおのずと給料が低くなる。
一方で海外、特に欧米では、企業における給与は能力や給与によって決まり、年齢はあまり考慮されない。そのため新卒であっても能力が高ければ、1年目から年収1,000万円という人もいる。
日本企業の国際的な地位が大きく低下
日本企業の国際的な地位はどんどん低くなっている。平成元年の1989年と現在の2021年の世界における時価総額ランキングを比較すると、そのことがよく分かる。
1989年は上位5社が全て日本企業だった。1位はNTT<9432>、2位は日本興業銀行、3位は住友銀行だ。しかしこの記事を執筆している2021年11月15日時点では、上位5社はおろか、上位10社にも日本企業はランクインしていない。
世界「時価総額」ランキング | ||
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順位 | 企業名 | 国・地域 |
1位 | Microsoft | アメリカ |
2位 | Apple | アメリカ |
3位 | Saudi Aramco | サウジアラビア |
4位 | Alphabet(Google) | アメリカ |
5位 | Amazon | アメリカ |
6位 | Tesla | アメリカ |
7位 | Meta(Facebook) | アメリカ |
8位 | NVIDIA | アメリカ |
9位 | Berkshire Hathaway | アメリカ |
10位 | TSMC | 台湾 |
時価総額ランキングの上位がアメリカ企業に取って代わられた日本企業。この状態ではたとえ日本で年功序列の慣習がなくなったとしても、初任給でアメリカにはかなわない状態が続きそうだ。
東南アジアの国々との差も小さくなる?
最近は東南アジアの発展途上の国々の所得も上がっている。もしも日本の大卒の初任給がこのまま変わらなければ、今後十年程度で差が小さくなるかもしれない。
各国・地域の大卒の初任給の推移に注目したいところだ。
(2021年11月23日公開記事)
文・岡本一道(経済ジャーナリスト)
編集・dメニューマネー編集部
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