都心のタワーマンションはもはや憧れの住まいというより、富裕層を対象とした金融商品と言えます。購入者が考えるのは、住みたいかどうかではなく、節税効果と利回りです。高騰し続ける都心のマンション価格を尻目に富裕層の不動産購買意欲は衰える気配がありません。なぜでしょうか。
ポイントは相続税評価額と実勢価格の差
なぜお金持ちがタワマンを買うか。その理由は「節税」と言われてきました。
相続税の計算で重要なのは相続財産の評価です。現金を不動産にすることで、評価額を大きく減らすことができます。タワーマンションの場合、その効果が特に大きい。つまり、節税効果が大きいのです。いわゆる「タワマン節税」です。
相続税の計算では、不動産は実勢価格より低い相続税路線価や固定資産評価額で評価されます。不動産を購入することで、土地は20〜30%、建物は40〜60%評価額を下げられます。
タワーマンションの場合も評価の方法は同じですが、特有の事情があります。価格に占める建築費の割合が大きいため、相続税の評価額をより圧縮できるのです。
さらに高層階は人気が高く、プレミア価格で売買されます。相続税の評価にはこのプレミアは十分に反映されず、低層階でも高層階でも評価額に大きな差はありません。
タワーマンションの高層階は相続税の節税効果が高いということです。
2億円の現金が7700万円まで評価を下げられる
せっかく手に入れたタワーマンションですが、富裕層の多くは実はそこには住んでいないようです。自分はそこに住まず、賃貸することでさらに相続税を節税できるのです。同時に賃料収入を得られます。
賃貸に出すことで土地や建物の評価はさらに2〜3割下がります。1億円で買った土地は最終的に相続税評価額が4900万円から6400万円に、1億円の建物は2800万円から4800万円にまで下がったことになります。
2億円の現金を、あわよくば7700万円まで評価を下げることができるのです。
タワマンは金融商品
人気が高いタワーマンションを買えば、賃貸に出して賃料収入を得られます。自分が死んだときには、相続税の節税ができます。相続後に売って現金化もできます。値上がり益も狙えます。
人気が高い都心のタワーマンションは金融商品と同じような性質を持っているのです。
タワマン節税に死角はないか
ただ税務署もこうした節税を問題視しています。相続税評価額と実勢価格の差が大きすぎる場合の評価をめぐり、裁判となった例もあります。過度な節税対策は否認される可能性があることに注意が必要です。
また、不動産市況が今後も好調なままとも言い切れません。不動産価格が下がれば、想定していた賃料収入も入ってこず、買い手が見つからず現金化もできないかもしれません。
現在の不動産市況や税制、金利動向では、タワーマンションは節税効果の高い金融商品という側面があるのは事実です。
しかし、これらの条件が崩れたとき、不動産市況が大きく下落するリスクがあることも認識しておく必要があります。
(2021年11月23日公開記事)
文・高村阿木夫(現役銀行員のマネーライター)
編集・dメニューマネー編集部
【関連記事】
・11月は残業減らすとボーナスが増えるって本当?
・初心者向け!ネット証券オススメランキング(外部サイト)
・「預金がおろせない?」銀行員が教える、親の生前にやるべき3つのこと
・株主優待をタダ取りする裏ワザとは?(外部サイト)
・「無料で保険に入れます」クレカ会社から封筒がくる理由