投資信託には様々な種類がありますが、識者の間でよく批判の的となるのが「毎月分配型」です。なぜ毎月分配型は批判の的になっているのでしょうか。
また、近年は「予想分配金提示型」という新しいタイプの毎月分配型が登場し、資金を集めています。この予想分配金提示型とはどのようなものでしょうか。
なぜ毎月分配型は批判の的になっていたのか
まず、「毎月分配型」とは、1ヵ月ごとに決算を行い、収益等の一部を分配金として毎月分配する運用方針になっている投資信託のことです。
毎月分配金をもらえるのは、一見、投資家としては嬉しいことに感じます。それなのに、なぜ批判の的になっていたのでしょうか。理由は2つあります。
1つ目は「運用効率」です。資産運用においては複利効果(利息を再投資し、利息が利息を生んで資産が雪だるま式に大きくなること)を発揮させることが重要です。
しかし、毎月分配型が払い出す分配金には、利益が出ていれば約20%税金がかかるため、その税金分だけ再投資額が少なくなります。そのため、複利効果を発揮させづらく、投資効率が悪くなってしまうのです。これは毎月分配型の構造上の理由なので、改善が難しい課題と言えます。
2つ目は、「運用会社の分配方針(姿勢)」です。過去の毎月分配型の多くは、運用結果がマイナスの月も、多額の分配金を投資家に払い出していました。この場合、税金はかかりませんが、投資元本を取り崩しているだけなので、分配作業にかかるコストの分だけ非合理的な行動をしていると言えます。
この「元本を取り崩しているだけの状態」を皮肉混じりに「タコ足配当」と呼びます(タコが自分の足を食べているという意味です)。
1兆5,000億円ファンドも誕生 予想分配金提示型とは
このような理由から、毎月分配型は批判の的となり、資金流出が続いていましたが、最近は「予想分配金提示型」という新しいタイプの毎月分配型が登場し、資金を集めています。
たとえば、すべての投資信託の純資産ランキングで9位(2021年11月22日現在。モーニングスターより)に入っている「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース」は純資産1兆5,000億円以上の人気ファンドですが、このファンドは予想分配金提示型で運営されています。
予想分配金提示型とは、基準価額に応じて支払われる分配金の水準をあらかじめ提示し、原則として、そのルールに沿って分配される投資信託です。例えば、前述の「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース」は以下のように分配されます。
毎計算期末の前営業日の基準価額 分配金額(1万口あたり、税引前) | |
---|---|
1万1,000円未満 | 基準価額の水準等を勘案して決定|
1万1,000円以上1万2,000円未満 | 200円|
1万2,000円以上1万3,000円未満 | 300円|
1万3,000円以上1万4,000円未満 | 400円|
1万4,000円以上 | 500円
このように、運用がうまくいっている(=基準価額が上昇している)ときは、たくさんの分配金を払い出し、運用がうまくいっていないときは、基準価額の水準等を勘案して決定します。あらかじめ一定のルールを決めることで、無理なタコ足配当が実施されてしまうリスクを限定することができますし、投資家としても受取額をあらかじめ見積もることができます。
定期的な収入が欲しい人は予想分配金提示型もあり
すべての予想分配金提示型がこのように運営されているわけではありませんが、基本的な考え方は同じです。
予想分配金提示型であっても「複利効果を発揮させづらく、投資効率が悪くなってしまう」というデメリットは払拭できませんが、「定期的な収入が欲しい」と思っている人には悪くない選択肢と言えるでしょう。
そもそも毎月分配型の当初の目的は、「定期的な収入が欲しい」と思っている人のニーズに応えるためでした。労働収入がないリタイアメント層はもちろん、現役世代の人にとっても、少額でも毎月副収入があるのは助かるものです。
そのうち、毎月分配することがエスカレートし、批判の的になってしまっていましたが、今回紹介した予想分配金提示型の登場で、投資家の利便性は再び向上しています。
「定期的な収入が欲しい」と感じている人は、投資効率が落ちることはしっかり理解したうえで、予想分配金提示型への投資を検討してみてはいかがでしょうか。
(2021年11月27日公開記事)
文・菅野陽平(ファイナンシャル・プランナー)
編集・dメニューマネー編集部
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