退職・老後が近い

40代夫婦からの相談「55歳までにセミリタイアしたい」は可能か?【連載第4回】

2022/02/05 14:00

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お金の悩みにFP(ファイナンシャルプランナー)が答える連載企画。今回は、50代でセミリタイアしたいという40代の夫婦からのご相談です。退職後は、現職での経験を生かし、フリーランスで働く予定。相談者の事例をもとに、セミリタイアを希望する場合のマネープランについて解説します。 回答者・武藤貴子(ファイナンシ

お金の悩みにFP(ファイナンシャルプランナー)が答える連載企画。今回は、50代でセミリタイアしたいという40代の夫婦からのご相談です。退職後は、現職での経験を生かし、フリーランスで働く予定。相談者の事例をもとに、セミリタイアを希望する場合のマネープランについて解説します。

回答者・武藤貴子(ファイナンシャル・プランナー)

マネーコラムの執筆、情報発信を中心に活動するFP(AFP)、金融ライター。会社員時代の経験から、副業や起業に関するアドバイスも行う。投資や在宅でできるネット副業に詳しい。著書に『いちばん稼ぎやすい簡単ブログ副業』(河出書房新社)がある。

相談 「55歳くらいまでにセミリタイアし、老後までペースを落として働きたい」

「55歳くらいまでにセミリタイアし、老後までペースを落として働きたい。しっかり資産形成しているつもりだが、セミリタイアは可能か確認したい」

相談者プロフィール

夫 42歳 正社員 年収700万円(うちボーナス130万円)
妻 42歳 パート勤務 年収200万円

郊外の分譲マンションに2人暮らし。現在の貯蓄額は、1,500万円(普通預金500万円+投資信託1,000万円)。夫は50代のうちにセミリタイアを希望している。夫婦ともに65歳まで働くつもり。セミリタイア後の夫の収入は、月15万円程度の見込み。

1か月の家計簿
収入金額
夫の手取り月収34万円
妻の手取り月収14万円
収入合計48万円

支出金額
住居費(住宅ローン返済)110,000円
食費(外食)68,000円
通信費(自宅Wi-Fi+スマホ2人分)21,000円
水道光熱費20,000円
医療費1,500円
死亡保険(夫)25,000円
医療保険(夫婦2人)4,500円
小遣い(夫婦)40,000円
その他(日用品・被服・美容・レジャー)50,000円
支出合計340,000円
※残った分は普通預金や投資信託で運用

武藤さんの4つのアドバイス

1 まずは、セミリタイアまでに形成できる資産を計算してみよう
2 収入が減るセミリタイア後。生活費の不足分はいくらか再度確認
3 受け取れる年金額や生活費から、老後の必要資金も概算しておこう
4 資産の目減り等もあり得る。セミリタイアは柔軟に考えよう

アドバイス1 セミリタイアまでにいくら資産形成できるのか計算する

現在、普通預金と投資信託で資産形成をしているという相談者。毎月4万円を普通預金に貯め、10万円を投資信託で運用しています。そこでまずは、今のペースで運用を続けると、セミリタイアまでにどのくらいの資産になるのか計算してみましょう。相談者は、「セミリタイアの時期は55歳までに」と希望していますが、ここでは、今から10年後の52歳に退職し、運用もそれまで続けると仮定します。

普通預金と投資信託はそれぞれいくらになるか

・普通預金
まず、普通預金について、これから増える金額を計算します。相談者は毎月4万円を貯金していますので、4万円×12か月×10年=480万円。さらに、年2回のボーナスから年間60万円程度を貯金にまわせるということなので、60万円×10年間=600万円、現在ある貯金500万円と合計すると1,580万円になります。なお、普通預金金利は0.001%とし、利息はないものと見なします。

投資信託
次に、投資信託はどうでしょうか。ここでは、国内や海外の先進国・新興国の株と債券に分散投資しているバランス型ファンドにて運用した場合を計算してみます。金融庁によると、これらの資産に分散投資した場合、平均で年率4%のリターンが得られたそうです。今ある投資信託1,000万円を、年利4%で10年間運用したとすると、10年後には約1,490万円となります(税金、手数料は考慮しない)。

これから積み立てていく分を計算してみましょう。同じくバランス型ファンドで、年利4%、毎月10万円を10年間積み立てると、約1,472万円になります。合計では2,962万円、普通預金の貯金と合わせると、10年後には4,542万円もの資産が形成できる計算です。

アドバイス2 収入の減るセミリタイア後、生活費の不足分はいくらか

次に、セミリタイア後に収入が減ることで、どのくらいの不足が発生するのか計算します。

まず、セミリタイアを先ほどと同じく10年後の52歳とした時、60歳までの8年間について考えてみましょう。セミリタイア後、相談者の手取り月収は15万円、妻の手取り月収は現在と変わらず14万円を見込んでいます。合計で月29万円の収入がありますが、現在と生活費が変わらなければ、月5万円の不足が生じます。60歳までの不足分は、「5万円×12か月×8年間=480万円」です。

60歳から65歳はどうでしょうか。妻が現在と同じ職場で働き続ける場合、60歳からは出勤日数が減り、手取り月収も現在の半分程度になるということです。その際は、手取り月収が夫婦合わせて22万円となり、月12万円の不足が生じます。年金を受け取る65歳まで5年間の不足分は、「12万円×12か月×5年間=720万円」です。つまり、52歳のセミリタイアから65歳までの13年間では、「480万円+720万円=1,200万円」が不足する計算です。

アドバイス3 受け取れる年金額や生活費から、老後の必要資金を割り出す

今度は老後の資金について考えてみます。セミリタイアまでに形成できる資産は、4,542万円でした。セミリタイア後に不足する1,200万円を差し引くと、3,342万円。老後の貯えとしては充分に思える金額です。ただし、もらえる公的年金の金額や老後の生活費から、不足が生じないか計算してみましょう。

まず、相談者が大学卒業から52歳までの30年間、平均月収35万円で働いた場合に受け取れる公的年金は、月額約12万3,000円となります(国民年金の満額である年78万900円含む)。妻の公的年金は、月額約10万3,000円(平均月収18万円として概算)、夫婦合計では約22万6,000円です。

老後生活にはいくらかかるのでしょうか。総務省統計局の「家計調査報告(家計収支編)2020年(令和2年)平均結果の概要」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の支出(消費支出+非消費支出)は、1か月あたり約25万6,000円でした。

このデータを用いると、「25万6,000円-22万6,000=3万円」が1か月あたりの生活費の不足分となります。寿命を90歳までと仮定すると、65歳から25年間では「3万円×12か月×25年間=900万円」が不足する計算です。

また、老後には病気やケガ、介護にお金が必要になることもあります。1人あたり300万円として、2人分では600万円を計上します。そのほか、購入したマンションのリフォーム費用として300万円程度を備えておきます。生活費の不足分と合わせると、「900万円+600万円+300万円=1,800万円」。老後に使える資金から差し引くと、「3,342万円-1,800万円=1,542万円」となり、1,500万円もの資金が余りました。計算上は、セミリタイアをしても老後に資金不足となる恐れはないと判断できます。

アドバイス4  資産の目減り等も考慮し、セミリタイアは柔軟に考える

シミュレーションの結果、相談者の希望通り、50代でセミリタイアを実行しても問題はなさそうです。ただし、資産運用は必ずしもシミュレーション通りになるとは限りません。また、フリーランス転向の際には収入が不安定になることも。計算上、資産は余ることになりますが、収入が減少して資産が目減りする恐れも考慮しておきましょう。さらに、将来受け取れる公的年金額は、あくまで現在の概算である点も注意が必要です。

なお、場合によっては、セミリタイアの時期をずらす、65歳以降も何らかの形で仕事をして収入を得るなどしたほうが、ゆとりを持てる可能性もあります。理想とするライフプランを実現するためには、柔軟性を持って考えていくことが大切です。

セミリタイアなら実現性が高まる

最近では、早期退職が話題を集め、これを目指す人も多くいます。完全なリタイアとなると、生活を切り詰めハイペースで資産形成しないと難しいですが、セミリタイアであれば、今回の相談者のように、実現できる可能性はぐんと高くなります。セミリタイアを目指すなら、現在の生活も充実させつつ、計画的に資産形成していきたいですね。

文・武藤貴子(ファイナンシャル・プランナー)
編集・dメニューマネー編集部

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