教育資金をつくる

子ども2人の中学受験を希望。大学までの学費はどうやってやりくりする?【連載・第5回】

2022/02/06 19:45

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お金の悩みにFP(ファイナンシャルプランナー)が答える連載企画。今回は、2人の子どもに中学受験をさせたいという30代夫婦からのご相談です。中学から私立に通わせる場合、受験にかかる費用や学費をどのように捻出するのか知りたいとのこと。相談者の事例をもとに、中学から大学までの受験費用や学費のやりくりについて解説します。

お金の悩みにFP(ファイナンシャルプランナー)が答える連載企画。今回は、2人の子どもに中学受験をさせたいという30代夫婦からのご相談です。中学から私立に通わせる場合、受験にかかる費用や学費をどのように捻出するのか知りたいとのこと。相談者の事例をもとに、中学から大学までの受験費用や学費のやりくりについて解説します。

回答者・武藤貴子(ファイナンシャル・プランナー)

マネーコラムの執筆、情報発信を中心に活動するFP(AFP)、金融ライター。会社員時代の経験から、副業や起業に関するアドバイスも行う。投資や在宅でできるネット副業に詳しい。著書に『いちばん稼ぎやすい簡単ブログ副業』(河出書房新社)がある。

相談 「子ども2人を中学受験させたい。大学までやりくりできるか」

「子ども2人の中学受験を考えている。塾代や学費など、大学までどのようにやりくりすればいいのか。家計が赤字にならず、老後も困らないプランが知りたい」

相談者プロフィール

夫 35歳 正社員 年収600万円(うちボーナス100万円)
妻 31歳 正社員 年収300万円(うちボーナス40万円)
長女 6歳
長男 4歳

数年前に都内マンションを購入した。現在の貯金は約700万円。子どもには中学から私立中学に通わせたい。教育資金は児童手当を子ども名義の口座に貯めている。老後資金の準備や住宅ローンの繰り上げ返済もタイミングを見て始めたい。

1か月の家計簿
収入金額
夫の手取り月収31万円
妻の手取り月収18万円
児童手当2万円
収入合計51万円

支出金額
住居費(住宅ローン返済)130,000円
食費80,000円
通信費(自宅Wi-Fi+スマホ2人分)12,000円
水道光熱費22,000円
子ども費(習い事含む)20,000円
死亡保険(夫)20,000円
医療保険(夫婦2人)4,000円
教育費積立(子ども2人分)20,000円
小遣い(夫婦)50,000円
その他(日用品・被服・美容・レジャー)45,000円
支出合計403,000円
※毎月10万円を貯金

武藤さんの4つのアドバイス

1 中学受験の費用や中高の学費は基本的に年収から出す
2 大学の学費は入学までにコツコツ貯めておく
3 学費に目処が付いたら、老後資金や繰り上げ返済を考える
4 投資にもチャレンジすればバランスの取れた家計に

アドバイス1 中学受験の費用、中高の学費は年収から出す

子どもの塾代や学費の重なる期間だけは貯金で補って

中学の受験費用や中高の学費は、基本的に年収から捻出すると考えましょう。現在、毎月10万円ほど、ボーナスからは年間80万円ほどを貯金していますので、将来的には、年間最大200万円を受験費用や学費に充てられます。

ところで中学受験には実際どのくらいの費用がかかるのでしょうか。受験情報サイト「中学図鑑」が行った中学受験にかかる費用の実態調査によると、「中学受験のために必要となる補助学習費」のうち学習塾(集団)にかかる費用は、小学4年生で約64万円、小学5年生で約75万円、小学6年生では約140万円、合計で約280万円にものぼります(世帯年収800万円以上の場合)。小6時には受験料もかかりますので、150万円は見積もっておく必要がありそうです。

一方、都内私立中学の初年度納付金は、平均約97万円。次年度からは、年間約67万円の学費がかかります(東京都生活文化局「令和3年度 都内私立中学の学費の状況」)。多額の費用がかかる中学受験ですが、子どもが1人なら年収から問題なく出すことができそうです。が、子どもは2人でさらには2歳差ですので、長女が小6~中3、長男が小4~中1までは塾代や学費が重なり、家計にとっては重い負担となります。

特に長女が小6、長男が小4の年は年間約210万円の塾代と受験費用がかかり、長女が中2、長男が小6の年は年間約220万円の学費と塾代がかかることに。この2年だけは、貯金を切り崩すことになるでしょう。ただ、現在は年間200万円貯金ができていますので、このペースを維持できるなら、多少貯金を使うことになっても問題はありません。

高校からは経済的負担が減る

それでは私立高校の学費はどのくらいでしょうか。東京都生活文化局の「令和3年度 都内私立高等学校(全日制)の学費の状況」によると、都内私立高校の初年度納付金は、平均約93万円。次年度からは、年間約64万円の学費がかかります。しかし、2020年から国の就学支援金制度が私立高校の授業料にも適用となり、あわせて都の授業料軽減助成金制度も利用できます(所得制限あり)。相談者の場合、授業料から合計46万7,000円が軽減されます。

これらの制度により、年間の実質負担額は大きく減り、1年次は約47万円、2年次は約17万円、3年次も約17万円となります。つまり、経済的負担が大きいのは、子ども2人が中学生の時まで。長男が高校に入学すれば、支出は減り家計も少し楽になるでしょう。

アドバイス2 大学の学費は入学までに貯めておく

一方、大学の学費は、早いうちからしっかり貯めておきましょう。大学入学までに貯めたい金額の目安は、300~500万円。相談者の家庭では、児童手当を使わずに貯めていますので、これだけで約200万円が用意できます。あとは、不足する100~300万円を自分たちで積み立てていきます。

大学の学費を貯めるには、塾代がかかり始めるまでが勝負。長男が塾に通い始める小学4年生までに、できるだけ頑張っておきたいところです。大学の学費は1人あたり400万円とすると、児童手当を引いた残りは200万円、2人分なら400万円となります。今から年間100万円を大学の学費として積み立てておけば、4年間でクリアできる計算です。

大学の学費は、特に理系に進むとこれだけでは足りない可能性もありますが、先にある程度貯めておけば安心です。あとは、子どもの進路を見極めつつ不足分を補ったり、場合によっては、進学先で奨学金を利用したりして乗り越えましょう。

アドバイス3 学費に目処が付いたら老後資金の準備にシフト

長女が高1、長男が中2になると、学費の負担は比較的軽くなります。ここからは、徐々に自分たちの老後資金の準備にシフトしていきましょう。それまでは子どもの学費が優先ですが、イデコiDeCo、個人型確定拠出年金)などを活用し、できれば今から少額を積み立て始めるのが理想です。

イデコの場合、毎月の最低掛金額は5,000円。夫婦で、もしくはどちらか一方でもスタートしておけば、10年後にはまとまった金額が積み立てられ、安心感にもつながります。また、無理のない範囲で住宅ローンの繰り上げ返済も検討してみましょう。学費の負担が減れば、老後資金の準備も繰り上げ返済も可能な家計です。

アドバイス4 投資にもチャレンジして積み増そう

相談者の家計は、無駄使いがなく、ライフイベントを見据えしっかり貯金ができています。あとは、ただ貯めるだけでなく、貯金の一部を投資にまわせればベスト。教育資金の積み増しが期待できます。

たとえば「つみたてNISA」なら、証券会社によっては月100円や1,000円から積立でき、解約はいつでも可能。自分たちの好きなタイミングで引き出せますので、使い勝手よく利用できます。まずは少額から始め、慣れてきたら積立額を増やしていくといいでしょう(毎月の積立上限額は3万3,000円)。イデコとあわせて「非課税制度を活用する」という視点を取り入れると、家計はもっとよくなっていきます。

中学受験はしっかりとマネープランを立てる

中学受験は多額の費用が発生しますので、大学までの学費を踏まえ、しっかりとマネープランを立てることが重要です。基本的に、中学受験の費用と中高の学費は年収から、大学の学費は入学までに用意と心得ておきましょう。

文・武藤貴子(ファイナンシャル・プランナー)
編集・dメニューマネー編集部

(2021年12月14日公開記事)

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