14年で12分の1!トルコリラ下落に思う「高金利通貨投資の罠」【連載・第17回】

2022/02/13 11:00

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これであなたも金融通 経済ニュースの読み方入門 第17回 筆者が最近気になった経済ニュースの一つが「トルコリラの急落」です。例えば11月下旬に、ロイターに「トルコリラ一時15%急落、大統領が緩和策擁護 11日連続で最安値」というニュースが載っていました。 この連載を通じて「金融市場」と呼ばれるものの正体は、21マスのう

これであなたも金融通 経済ニュースの読み方入門 第17回

筆者が最近気になった経済ニュースの一つが「トルコリラの急落」です。例えば11月下旬に、ロイターに「トルコリラ一時15%急落、大統領が緩和策擁護 11日連続で最安値」というニュースが載っていました。

この連載を通じて「金融市場」と呼ばれるものの正体は、21マスのうえで、4人のプレイヤー(中央銀行、金融機関、機関投資家、個人投資家)によって行われるマネーの動きそのものと説明しています。21マスは以下の通りです。

米国欧州日本中国新興国
為替1591317
債券36101418
株式37111519
不動産48121620
商品21

このトルコのニュースは、21マスで言えば、17〜20番に関係します。

金融市場の中心部から離れた話題ではありますが、トルコリラは日本人投資家に一定の人気があり、トルコリラ建ての金融商品を保有しているという読者もいるでしょう。そうでなくても、新興国のリスクを学ぶには良いケーススタディです。今回は、足元のトルコリラ急落について見ていきましょう。

トルコリラの下落が止まらない

上で紹介したニュースは、対米ドルに対するトルコリラの下落が止まらないという内容です。トルコリラの価値が下落していくわけですから、トルコリラの金融商品を保有している投資家にとっては為替差損が発生し、投資資金が減ってしまいます。

対米ドルで考えるとやや分かりづらいので、対日本円で考えてみましょう。

「トルコリラ・日本円」の為替レートは足元で8円20銭くらいですが、2020年4月は16円くらいでした。2年も経たずに、通貨の価値が半分になってしまったわけです。

トルコリラ建ての金融商品(もしくはトルコリラそのもの)は高金利で知られていますが、どんな高い金利を受け取っていても、2年も経たずに為替差損で投資元本が半分になってしまっては、トータルで利益を残すのは難しいでしょう。

14年かけて12分の1になったトルコリラ

実は、トルコリラの下落は今に始まった話ではありません。「トルコリラ・日本円」の長期チャートを確認すると、リーマン・ショック前の2007年10月には約100円をつけていました。足元は約8円ですから、14年かけて12分の1になってしまっています。

2007年から今日までずっとトルコリラを保有していた投資家はほとんどいないと思いますが、仮に14年間保有していた場合、100万円が8万円になってしまったということです。14年間金利を受け取っているはずなので、実際はもう少し損失が限定されますが、いずれにせよ投資としては大失敗でしょう。

トルコが如実に表す「カントリーリスク」

なぜトルコリラはここまで下がり続けているのでしょうか。その要因として、強大な権力を持つエルドアン大統領がトルコ中央銀行の政策決定に関与していること、そしてエルドアン大統領が利上げに否定的であること、米国と対立関係にあり地政学リスクが嫌気されていることなどが挙げられます。

特に、大統領が絶大な権力を持ち、表立って中央銀行の政策に介入していることは、先進国にはない大きな特徴です。金融市場や金融政策が政治情勢に左右されることを「カントリーリスク」と呼びますが、トルコはそれが如実に現れている国と言えるでしょう。

リテラシーを高めることで、安易な投資判断をせずに済む

ロジックの細かい解説は割愛しますが、そもそも高金利通貨は、購買力平価に基づくと通貨価値が減価していく運命にあります。トルコリラはやや極端な例ですが、高金利通貨にはそれ相応のリスクがあると考えるのが無難です。

トルコリラに関しては、通貨安が止まらないため、トルコ10年債利回りは21%を上回りました。10年債利回りとしては異常な数字であり、それくらいの金利を提示しないと、投資家が買ってくれないことを意味しています。ネット証券を覗いてみると、欧州復興開発銀行のトルコリラ建債券(残存年数2年強)が利回り21%で売りに出ています。

パッと見るとお買い得商品に見えますが、ここまで読んで頂いた人は、いかにリスクが高い投資であるか理解できたと思います。

一概に「高金利通貨は投資に値しない」と言いたいわけではありませんが、今回のトルコリラ急落の背景や理由を知ることによって、高金利通貨へのリテラシーが高まり、安易な投資判断をせずに済むようになるでしょう。

文・菅野陽平(ファイナンシャル・プランナー)
編集・dメニューマネー編集部

金融市場は「4人のプレイヤー」が「21マス」の中で動くゲームと考えよう

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(2021年12月29日公開記事)