連載「お金の心理学」第11回 現状維持にすがる人々
2022年に入り、米国市場、日本市場ともに株価の下落が続いています。コロナショックをきっかけに投資を始めた方にとっては、初めての弱気相場といえるのではないでしょうか。含み損がじわじわと拡大し、不安を抱えている方も多いはずです。
こんな時、「とりあえず様子見」を選ぶ人が多いようですが、それは取り返しのつかない危険な選択かもしれません。
「とりあえず様子見」でチャンスを逃していないか?
「とりあえず様子見」で株価の回復を待った場合と、思い切って損切りした場合について、数字をもとに見ていきましょう。
投資家の状況
1口1万円の米国株を、100万円で100株購入。
その後、株価は下落して8,000円になり、急落して一時は5,000円に。少しずつ上昇し始め、数ヵ月後には7,000円まで回復。
売買せず様子見した場合
100万円が70万円になり、30万円の含み損が発生。
株価8,000円で損切りし、株価5,000円で再投資した場合
損切り時点での手元現金は80万円。80万円を元手に、1口5,000円で再投資すれば、160株購入できる。株価が7,000円に回復すれば、資産は112万円となり、12万円の含み益が発生。
以上はあくまで例ですが、こういう場合は実際にも起こり得るでしょう。
思考停止の「とりあえず様子見」が危険な理由
私たちが何かを決める時、「現状を変えたくない」という気持ちが強く働きます。これを「現状維持バイアス」といいます。
「転職をなかなか決断できない」「つい同じ商品を選んでしまう」このような時も、現状維持バイアスが働いている可能性があります。
現状維持バイアスは、投資の意思決定にも影響を及ぼします。
現状維持バイアスによって、下落相場で深く考えることなく「とりあえず様子見」を選択した結果、多数の「塩漬け株」を抱えてしまう人もいます。
塩漬け株とは、値上がりは期待できないものの、含み損が発生しており売却すると損失が確定するため、手放せずに長期保有している株を指す投資用語です。
変化を恐れる気持ち、損をしたくないという気持ちがバイアスとなり、投資判断を鈍らせてしまうことがあるのです。
バイアスを排除し、根拠に基づいた投資判断を
ただ、現状維持は必ずしも悪ではありません。
たとえば、積立投資でドルコスト平均法の恩恵を受けるつもりなら、焦って損切りするのは逆効果です。むしろ下落相場に振り回されず、長期的にコツコツと投資を継続することが、将来のリターンにつながります。
また損切りして再投資しようとしても、必ずしも底値で再投資できるとは限りません。
大切なのは、「様子見」にしろ「損切り」にしろ、下落相場としっかり向き合い、根拠を持って投資判断することです。
下落相場から目を背けて判断を先送りにしたり、意思決定できずに無為に時間を過ごしたりするのではなく、しっかり情報収集した上で、自分なりの投資方針を立てましょう。
文・木崎 涼(ファイナンシャル・プランナー)
編集・dメニューマネー編集部
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