退職・老後が近い

【FPに相談】大学生の息子の進路変更で教育費アップ、老後資金が不安な50代夫婦がすべきこと

2022/04/03 06:00

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お金の悩みにFP(ファイナンシャルプランナー)が答える連載企画。今回は、老後資金に不安を抱える50代夫婦からのご相談です。資産形成はしてきたつもりだったが、息子の進路変更で教育費が増え、リタイア後が心配とのこと。相談者の事例をもとに、50代がすべき老後資金の対応策を解説します。 回答者・武藤貴子(ファイ

お金の悩みにFP(ファイナンシャルプランナー)が答える連載企画。今回は、老後資金に不安を抱える50代夫婦からのご相談です。資産形成はしてきたつもりだったが、息子の進路変更で教育費が増え、リタイア後が心配とのこと。相談者の事例をもとに、50代がすべき老後資金の対応策を解説します。

回答者・武藤貴子(ファイナンシャル・プランナー)

マネーコラムの執筆、情報発信を中心に活動するFP(AFP)、金融ライター。会社員時代の経験から、副業や起業に関するアドバイスも行う。投資や在宅でできるネット副業に詳しい。著書に『いちばん稼ぎやすい簡単ブログ副業』(河出書房新社)がある。

相談 「息子の進路が変わり、教育費の負担が増えた。老後資金が心配」

「文系に進むはずだった息子が進路を変え、理系の私立大に入学。教育費が増え、自分たちの老後資金を圧迫しそうで不安。今から何をすべきか」

相談者プロフィール

夫 53歳 正社員 年収650万円(うちボーナス80万円)
妻 51歳 パート勤務 年収60万円
長男 20歳 大学生

50代夫婦と20歳長男の3人暮らし。貯金は約500万円、子どもの大学進学費用は約450万円準備。夫は勤め先で財形年金貯蓄に加入、退職金は約900万円。夫婦とも65歳でリタイアの予定。教育費の負担増で、老後資金が目減りするのではと不安。

1ヵ月の家計簿
収入 金額
夫の手取り月収 36万円
妻の手取り月収 5万円
収入合計 41万円
支出 金額
住居費(住宅ローン返済) 11万円
食費 7万円
通信費(自宅Wi-Fi+スマホ2人) 1万6000円
水道光熱費 2万4000円
医療・がん保険(夫婦2人) 9800円
死亡保険(夫) 3万円
小遣い(夫婦2人) 5万円
その他(日用品・被服・美容・レジャーなど) 4万円
支出合計 34万9800円

武藤さんの4つのアドバイス

1 奨学金を貸与し、教育費の負担を減らそう
2 今からでもイデコで老後資金作りを始めよう
3 老後資金の準備はつみたてNISAも併用して
4 妻はパート勤務を増やし、夫婦でリタイア時期を再検討しよう

アドバイス1 奨学金の貸与で教育費の負担を減らそう

子どもの進路変更で教育費が増えることもある

相談者が老後資金に不安を抱いたきっかけは、文系に進むはずだった息子が進路変更し、理系の私立大に進学したこと。幸い希望の大学に進めましたが、受験対策の費用が予想以上に膨らみました。

また、文系に進むつもりで見積もっていた学費も、理系に変更したことで増加。さらに、未定ではあるものの、息子は大学院への進学も希望しているそうです。

私立文系大の学費は4年間で約650万円、それに対し、私立理系大の学費は4年間で約780万円。その差は、約130万円にもなります(日本政策金融公庫「令和3年度 教育費負担の実態調査結果」から計算)。一方、私立の理系大学院の学費は、2年間で130万円ほど(早稲田大学Webサイト)。大学の学費と合わせると約910万円と高額で、その場合、私立文系と比べて260万円も多くかかります。

奨学金を貸与し親の負担を減らす

元々、私立文系に進んだ場合も貯えだけでは約200万円が不足しますが、「その時は4年間の年収から出せれば問題ない」と、やや楽観的に捉えていたそう。しかし、大学院まで進学となれば、不足は約460万円と跳ね上がり、危機感を持ったと言います。

教育費の重い負担がのしかかる状況を変えるには、まず、子どもが奨学金を貸与し、親が支出する教育費に歯止めをかけましょう。

奨学金を借りることに抵抗を感じる方もいますが、家庭それぞれ、出せる金額には限りがあります。それを超える分については奨学金を貸与し、加えて、子どもがアルバイトで補てんする、無理のない分だけ追加で親が支出するなどしましょう。

アドバイス2 イデコで老後資金作りを始めよう

不足する老後資金はいくらか計算する

教育費の負担増が奨学金の貸与で抑えられたとして、次は、65歳で退職した場合、老後資金がどのくらい不足するのか計算してみます。

まず、相談者夫婦の65歳以降の年金受取額を概算すると、月額23万1000円となりました。一方、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の1カ月の支出合計は、25万5550円(総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2020年 平均結果の概要」)。1カ月で約2万5000円の不足が生じ、65~90歳までの25年間では、約750万円足りない計算です。

また、老後には、生活費以外にも、病気や介護に備える費用として1人あたり300万円程度が必要です(300万円×2人=600万円)。さらに、相談者は持ち家のリフォームも希望しているため、その費用として500万円を計上します。合計すると、1850万円が老後に必要な金額となります。

ただし、勤め先の財形年金で約400万円、退職金で約900万円が得られる予定ですので、「1850万円-(400万円+900万円)=550万円」。老後に不足する金額は、約550万円です。

今からでもイデコを活用しよう

今から老後資金を準備するには、イデコ(個人型確定拠出年金)で積み立てていくのがおすすめ。50代の相談者は、若い人と比べれば老後まで時間がありませんが、それでも、節税のメリットがあるからです。ただし、運用できる期間が短いため、保険や預金といった元本確保型の商品を中心に運用しましょう。

たとえば、相談者がイデコを利用し、60歳までの7年間、毎月2万3000円(相談者の毎月の掛金上限額)を積み立て、1%の利率で運用すると、合計で約200万円になります(積立元金+運用益)。この場合、7年間の節税額(所得税・住民税)は、合計約58万円です。

同様に、妻も60歳までの9年間、毎月2万3000円を積み立て、1%の利率で運用すると、合計で約260万円になる計算です(積立元金+運用益)。夫のような所得税や住民税の節税効果はないものの、運用益の節税額が約2万3000円あります。夫婦合わせると、約460万円が用意できる計算です。

アドバイス3 老後資金の準備はつみたてNISAも併用して

残りの老後資金約90万円は、同じく非課税制度である「つみたてNISA」を利用して積み立てましょう。つみたてNISAで月7500円積み立てると、仮に1%の利率でも10年後には約95万円が用意できる計算に。もちろん、ゆとりのある老後のため、定年まで積立を続けて構いません。

イデコとつみたてNISAを併用した場合の毎月の積立額の合計は、5万3500円。今ある貯金は生活防衛費として手元に残したうえで、掛金は毎月の月収からまかないましょう。

アドバイス4 妻はパート勤務を増やし、夫婦でリタイア時期を再検討しよう

お金を積み立てる以外にも、働く時間や期間を延ばすことで、収入アップを図りましょう。たとえば、妻が厚生年金保険料を支払うまでパート勤務を増やせれば、収入だけでなく、将来の年金受取額も増やせます。

また、健康に問題がなければ、夫婦ともにリタイア時期を再検討し、できるだけ長く働くことを考えましょう。長く働けば、その分、労働による収入が得られない「リタイア後」を短くすることができます。

教育費の負担を抑え、老後資金の準備に着手を

不安の元となっている教育費は、奨学金の貸与で乗り切り、そのうえで、「イデコつみたてNISA」で老後資金の準備に取り掛かりましょう。さらに、働き方を見直せば、ゆとりのある老後が見えてくるはずです。

文・武藤貴子(ファイナンシャル・プランナー)
編集・dメニューマネー編集部

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