「お客様は神様です」という言葉がありますが、銀行員には、本音では「できるなら取引したくないお客様」がいます。筆者のこれまでの経験から、そんなお客様は次の3種に分類できます。
1 キャンペーンだけが目当てのお客様
銀行に限らず金融機関では、新たなお客様を呼び込むキャンペーンを有利な条件で行っていますが、これを渡り歩くお客様がいます。
たとえば退職金などを対象に金利を上乗せするキャンペーンでは、銀行の目的は満期になったら保険や投資信託、債券などを買ってもらうことです。
ところが、一部のお客様はキャンペーンの定期が満期になると、ごっそり他の金融機関へ預け替えてしまいます。
ある信託銀行のキャンペーン定期の金利は3ヵ月0.8%です。もし3,000万円を3ヵ月間預けると税引きの後の受取利息は約4万7775円。たしかに現在の金利環境では魅力的です。
銀行員も、こうしたお客様の意向は事前に察しが付きますが、法に触れるわけでもなく、やめて欲しいとは言えません。しかし、定期預金が満期になれば、よそへ移っていくことが分かっているのですから、複雑な心境です。
2 信義則や法令に反する取引先
銀行は、融資金がある企業などに対しては、申告書や決算書の開示を求めますが、「個人情報を銀行に渡す必要はない」と開き直る人がいます。これは先の事例と違い悪質です。
融資する際、お客様から銀行取引約定書を出してもらいますが、これには「貸借対照表、損益計算書等の借主の財務状況を示す書類の写しを、定期的に貸主に提出するものとします」と書かれています。
このため、お客様が書類の提出を拒まれた場合、銀行としては借入金の一括返済を求められます(さすがにそこまでやったことはありませんが)。
ほかにも粉飾決算をしたり、書類を偽造したりというケースも実際にありました。これらは犯罪ですから許されません。
3 ホンネを明かさない人
銀行も商売ですから担当者にも目標があって、営業成果を期待できない先にあまり労力をかけたくありませんが、お客様の中には本音を明かさない人もいます。なかなか結論を出してもらえず、銀行員が「期限を切って交渉しろ」と上司から責められてしまいます。
筆者は経験上、本音を明かさないことについてのは個人の性格だけでなく、地域差もあるように感じています。ある地方の例でいうと、初対面でもストレートに本題に入るお客様の多いところもあれば、お隣(都道府県は明らかにしませんが)は保守的でなかなか本音を明らかにしれくれないお客様が多く、商談が進みづらいのです。これは銀行員泣かせです。
銀行という業種は公共性が高く、よほどの理由がなければ顧客を選べません。しかし、銀行員も人の子。こういうお客様とは付き合いたくないというホンネがあります。
銀行と良好な取引関係を築いて損はありません。そのためにも、銀行員のホンネを知っておいていただければと思います。
文・高村阿木夫(現役銀行員のマネーライター)
編集・dメニューマネー編集部
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(2022年3月10日公開記事)