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山田真哉-横川楓「お金の教育をするならいきなり『家計管理』じゃダメ」【対談・前編】

2022/04/08 07:00

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2022年度の高校の新学習指導要領では、家計管理などを教える家庭科の授業で「資産形成」が盛り込まれた。時折しも成人年齢が18歳に引き下げられ、各種投資契約が18歳から親の同意なく結べるようになったこともあり、若年層への「お金の教育」に対する注目が急速に高まっている。 4月8日に1周年を迎えるdメニューマネーでは、『さお

2022年度の高校の新学習指導要領では、家計管理などを教える家庭科の授業で「資産形成」が盛り込まれた。時折しも成人年齢が18歳に引き下げられ、各種投資契約が18歳から親の同意なく結べるようになったこともあり、若年層への「お金の教育」に対する注目が急速に高まっている。

4月8日に1周年を迎えるdメニューマネーでは、『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』(光文社)をはじめ多数の著書を持ち、最近ではTVドラマの監修やYouTuberとしても活動している公認会計士・税理士の山田真哉氏と、お金の専門家/金融教育活動家で、1月に設立した一般社団法人・日本金融教育推進協会で代表理事を務める横川楓氏に、「お金の教育・リテラシー」について語り合ってもらった。(構成・濱田 優=dメニューマネー編集長/写真・森口新太郎)

プロフィール

やまだ・しんや/公認会計士、税理士、作家、YouTuber。『女子大生会計士の事件簿』(角川文庫)『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?~身近な疑問からはじめる会計学~』 (光文社新書)など著書多数。
登録者数40万人「オタク会計士ch【山田真哉】少しだけお金で得する」

よこかわ・かえで/やさしいお金の専門家、金融教育活動家、一般社団法人日本金融教育推進協会代表理事。著書に『ミレニアル世代のお金のリアル』(フォレスト出版)がある。TV・ラジオなどのメディア出演も多数。
やさしいお金の専門家 横川楓(公式サイト)  | Twitter

「金融教育は小学校からやるべき」──横川

──4月から高校で資産形成の授業が始まるということで、「金融教育」についての取材は多かったのではないですか?(編注:対談は3月末に行われました)

山田 横川さんは多いと思いますが、僕は初めてです。お金の専門家だと思われてないってことなんでしょうね(笑)。そう名乗ったこともがないし、「お金 専門家」で検索しても僕は出てこないと思うんですよ。横川さんはお金の専門家と名乗ってらっしゃいますよね。

横川 そうですね、取材は最近特に増えましたね。肩書は子供や若い人にもわかりやすく身近なイメージを持ってほしいと思い、「お金の専門家」にしています。

たとえば、FP(ファイナンシャルプランナー)って“ライフプランニングをする人”というイメージがありますが、幼稚園児にお金のことを教えるなら、ライフプランニングからではないですよね。 若い世代は、ライフプランニング以前に、年金とか税金、保険の仕組みなど、まず基礎知識をつけてもらう必要があり、ライフプランニングはその次の段階。

まずはお金の知識を等身大の目線でわかりやすく教えられる人でありたいと思って、お金の専門家と名乗っています。

山田 金融庁さんが金融教育の動画を作ってるんですが、たしか家計管理、ライフプランニングから始まるんです。そこから始めるのってFPっぽい発想だなぁと思った記憶があります。

横川 少なくとも「子ども」には少し難しいですよね。私はお金のことは小中からちゃんと学ぶべきだと思っています。

山田 そこは同感です。

横川 小中で土台を作っていれば、高校生になった時に家計管理のビデオを見るのもいいかもしれないですけど、実際には……。

山田 大学でアルバイトを始める人が多いから家計管理から始めているんでしょうけど、ただ「それで面白いのかな?」って思いますね。金融教育するなら、『半沢直樹』を見せて仕組みを解説したほうが面白がって見てくれると思うんですけどね。

「金融教育は金融庁じゃなく経産省が音頭をとるべき」──山田

山田 僕の金融教育観って、根本的には商売が前提なんです。商売を自分でやるなら個人事業主だし、その下で働くなら会社員になるし、出資するなら投資家。半沢直樹でも他のドラマでも漫画でもいいんですが、学生向けの入り口としてはビジネス要素のあるエンタメから入ったほうが面白い。なのに、いきなり「老後までのライフプランを考えましょう」とされるとガッカリします。

横川 「お父さん、お母さんが働いてお給料をもらっているから、自分がお小遣いをもらえる」とか、そういう自分の経済環境やお金の流れが分かってない段階で、いきなり「将来のために家計管理しなさい」と言われても、いまいち理解が追い付かないはず。

それに、家庭科の授業でお金について教えるにしても、ほかの項目との兼ね合いで網羅的に教えられるわけではありません。教えられることは限られている中で、うまく理解もできていないとなると、理解をするための勉強ではなく、テストのためだけの勉強にならないかという懸念もあります。

山田 ただ、教科書とか学校の授業がつまらなければ、横川さんが講演する意味が出て……って、ひどいこと言ってますね(笑)。

横川 若い子に話を聞いていると、たしかに1回だけクレジットカードやクーリングオフの授業を受けた記憶があるという子もいます。ただ、教えるべきお金の知識がたくさんある中で、たった1テーマだけ教えられたのでは、自分にどれだけ必要な知識かも理解できておらず、それが金融教育だという認識になっていないのです。

山田 僕はクレジットカードとかリボ払い、利息の話って「数学」でやって欲しい。「太郎君は月5000円のリボ払いにしました、1年後残債はどれぐらい残ってるでしょうか」とか。

山田真哉氏
山田真哉氏(撮影=森口新太郎)

それに金融教育は小学校からやるべきで、昔は(初等教育で身につけさせるべき能力は)「読み書きそろばん」といわれました。そろばんって算数のことですけど、算数を金融に寄せることは可能です。決算書の分析にしても、要は割り算ですから。

横川 お金のことを網羅的に教えようとなると、家庭科の授業だけでは、明らかに情報も時間も足りません。高校の段階で奨学金を借りる子もいるとなると、中学の段階で奨学金、つまりお金を借りることや、それに付随して利息についても理解しておいたほうがいい。

小学生の時とかに「お小遣いの前借り」とかすると思うんですけど、「お金を借りると利息が発生する」ということを学ぶために、たとえばお小遣いの前借りをするときには、家でも利息の仕組みを取り入れてみるとか。子供でも理解できる伝え方を工夫するということが大事なのではないかと思います。

山田 家庭科だから内容も投資というより消費に寄りそうですしね。

横川 前から金融教育自体はされていて、株式投資の内容を教えている学校もありました。今回拡充されるのが資産形成の内容ですが、具体的には先生の裁量で内容も変わってくるはず。

山田 あと金融教育に、金融庁が出てくるのが疑問なんですよね。そこは経産省だろうと。

──あぁ、なるほど。文科省でもなくて。

山田 はい。経産省が音頭とるべきでしょう。金融庁さんのゴールって広く投資してもらうことだと思いますけど、経産省だって同じ。金融って結局ビジネス、商売なんだということを教えるべきです。経済大国としてやってきた日本で、経済について教える役目は経産省にあると思っています。

──あと財務省がやるべきかもしれませんね。

山田 税金をとるためにはそうですね。

「うんこ漢字ドリルのようなブレークスルーが金融教育に欲しい」──山田

──「家庭科の先生がどこまで教えられるのかな?」という疑問も浮かびそうですが、保護者としては、家で何かできることはないかなとも思います。投資や資産形成をやっていない人も含めて、誰でも家庭でできるお金の教育って何ができるでしょうか?

山田 YouTube見ればいいと思います。ブログでもいい。今ってたいていのことがネットにあります。それこそ中田敦彦さん、両学長のリベ大……お金について解説しているチャンネルはたくさんあります。

金融庁、財務省、中小企業庁の動画やサイトもありますが、そんなに見てもらえてないのは、「面白そう」じゃないからでしょう。半沢直樹が視聴率20%とか取ったとか、(主人公が起業する)『梨泰院クラス』がエンターテイメントとして成立しているので、そういう作品から学べばいいと思います。

横川 ただ、そこで難しいのが、SNSやYoutubeなどたくさん情報があふれている中で、どれが正しいものなのか、自分に合ったものなのかの判断がつきづらいということですね。 親御さんからも「子供に見せていいか判断がつかない」という話を聞きます。

たとえば「これをすれば間違いなく稼げる!」「これを買っておけば間違いなし!」というフレーズはとても魅力的ですが、それが本当に稼げて、怪しいものはでないのかどうか、損をしてしまうリスクは本当にないのかどうかなど、きちんと判断できるリテラシーは必要。

横川楓氏
横川楓氏(撮影=森口新太郎)

成人年齢が18歳に引き下げになり、若い子でも情報商材など高額な契約もできてしまうようになり、よりたくさんある情報の中でどれが正しい情報なのか見極められるようにならないといけない時代になってきています。

山田 難しいと思うのが、たとえば理科とか数学とか、「自然科学」の分野は法則で成り立っているので基本的に答えが一つですが、金融って「社会科学」の分野であること。答えは一つじゃなく例外もたくさんあるし、「実験の結果、6割の人は成功しました」みたいなところがあることですね。

本音でいえば、「どれが確かなのか自分で考えてよ」って思いますけど(笑)、とはいえ歴史的に、多くの人が経験してきて、「なんとなくこれが正しそう」ということは分かるわけですよ。借金は少ないほうがいいだろうし、長期で分散投資したほうが安全とか。

そういうことを教科書として教えられたらいいと思うんですよね。ただ教科書の難しいところは制約が多いことですね。それこそインデックス投資の話をするのに、eMAXISとかバンガードの話ができない。

横川 そうですね。ただ、公教育では基本的には「何がいい」「おすすめ」ということを描くのではなく、あくまで基礎知識を教えるべきだと思います。インデックス投資がどういうものか、ほかにはどういう種類があるのか、それぞれのメリット・デメリットなどを学んで、どれが自分に合っているかを自分で考えられるようにする、基礎を作ることが教育ですべきことかなと。

そのうえで書籍とか、YouTubeとかネットの情報で、真似したい人、こういうふうになりたいという人を見つけて、その人の手法を真似してみるという段階になるのかなと。

山田 具体名がないとつまらなくですか?

──たぶんメディアの記事も一緒で、「インデックス投資がいいですよ」じゃなく、具体的な買うべきインデックスファンド名を書いたほうが読まれます。

山田 僕、中学校一年生の英語の教師が本当に苦手だったので、英語いまだに苦手なんですよ。そういう意味で入り口って大事です。金融教育も今のところおカタい感じになっちゃっていますよね。

それですごいなと思のが「うんこ漢字ドリル」です。漢字の勉強なんてやらない子が、うんこならやってくれるって。そういう方法が何か金融教育にもあるんだろうなとは思います。

横川 そこは公教育と民間教育の違いですね。

山田 ええ。ただ公教育として金融をやるにしても、何かブレークスルーがないとしんどい。

横川 私は算数や数学があまり好きではなかったんですけど、大人になってからだったら、嫌いな勉強はあえてしなかったかもしれません。でも、物心つく前に学校教育で習ったから、足し算、引き算、掛け算、割り算を当たり前にできます。そういう最低限の土台づくりをするのが公教育で、それ以降を民間がやると。 面白く教えることも大事ですけど、義務教育として、学びたい/学びたくないという意思を問わず学んでおかないといけないものがあると思っています。

山田 ある程度強制的に学ばなきゃいけないものがあるってことですよね。

横川 教科書を面白くするのは難しいかもしれないけど、副読本とか参考書とかならできるかもしれませんね。

山田 あと「身近なことに落とし込めばいい」というわけでもないと思っています。身近のことってたしかに分かりやすいけど面白いとは限らない。

人は身近なことよりも、もっと面白いことを求めるんですよ。ライフプランの話なら、お小遣いのやりくり、クレジットカードの仕組みをいきなり教えるより、「クレジットカードで悲惨な目に遭った人の話」「お金で大失敗した芸能人」とか。

あと歴史をやってほしい。長期分散投資は今でこそ重要だって誰もがいうと思いますが、ドルコスト平均法が見つかったのって、たかだか70年ほど前。それがどうやって生まれたのか? みたいな話は面白くできると思うんです。

もっとダイナミックにやっていい。中1になるうちの娘もハマった『半沢直樹』みたいな大仰なドラマから入ってもいいし、そこから経済やお金のことを説明できると思います。

後編(4月9日公開)はこちら

山田ー横川対談,金融教育
(画像=山田・横川両氏(撮影=森口新太郎))

構成/編集・濱田 優(dメニューマネー編集長)
写真・森口新太郎

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