日本たばこ産業(JT) <2914> やオリックス <8591> といった個人投資家から人気のある株主優待の廃止が続いている。株主優待に魅力を感じて株式投資を始めた投資家も多いはず。株主優待を廃止する可能性が取りざたされている銘柄を見てみよう。
優待廃止で「オリックス・ショック」
リース最大手で金融事業を展開するオリックス <8591> は5月11日の決算発表時に、24年3月末を最後に「ふるさと優待」「株主カード」の株主優待制度を廃止すると発表した。翌日の株価は2.3%安と売られた。
オリックスは優待人気でトップクラス。「ふるさと優待」はグループ取引先が扱う商品を厳選したカタログギフトを提供。3年までの株主は5,000円相当、3年以上の株主は1万円相当の商品が選べる。
「株主カード」はグループが提供するホテル、レストラン、プロ野球のオリックス観戦、ゴルフ場、レンタカー、カーシェアなどの割引が受けられる。人気が高かったため失望感が広まった。
5月12日には、G-FACTORY <3474> 、東京特殊電線 <5807> がQUOカードの株主優待を廃止すると発表。G-FACTORYは翌日15.2%安、東京特殊電線は10.1%安と急落した。市場では「オリックス・ショック」として、カタログギフト、QUOカード系の優待人気企業の株価に冴えないものが目立った。
大企業が優待を廃止するのは株主公平の見地から
株主優待の廃止の流れは2月14日のJT <2914> から始まった。100株以上を1年以上継続保有している株主に食品などの自社製品を贈る優待を、22年12月末で最後にすると発表した。その流れがオリックスに続いている。今後も海外投資家比率や機関投資家比率が高い企業が追随する可能性が高い。
大企業にとっては、個人株主は安定株主として株価を支える効果が期待される。自社製品を優待にする場合は宣伝効果もある。
しかし、株主優待は基本的には海外投資家を対象としていない。国内年金や投信は国内信託名義なので、株主優待は信託銀行に送ることになる。機関投資家は金銭に換えられる優待は金銭化しなくてはならないため手間がかかる。
JTもオリックスも優待廃止の理由として、「海外投資家への不平等の解消」を挙げている。海外では株主優待制度を導入している企業はほとんどない。株主には継続的な増配などで還元していくのがグローバル・スタンダードだ。
新興企業は東証の市場改革が優待廃止のきっかけに
新興企業など小さい企業が株主優待を廃止するのは、22年4月の東証市場改革が契機となっている。
旧市場区分では東証1部の昇格基準は2,200人だったが、プライム市場では800人に緩和された。新興企業は東証1部への昇格を狙い、株主数を増やすために株式分割や株主優待の導入などの株主対策をしてきた。
新興企業なら成長投資に使うべき資金を「株主作り」のために使っていたことになる。この資金を配当や設備投資に戻すのは自然の流れだ。
優待廃止候補の大企業
株主優待を廃止にする企業の候補として市場が見ているのは、自社製品とあまり関係ないカタログギフトやQUOカードなどの商品券を提供している企業だ。
例えば、カタログギフトがもらえる株主優待人気ランキングには、イオンモール <8905> 、東海東京フィナンシャル・ホールディングス <8616> 、ゆうちょ銀 <7182> 、KDDI <9433> といった有名企業がランクインしている。
海外持株比率、機関投資家比率も高いだけに今後優待廃止する可能性があることには注意しておくべきだろう。
文/編集・dメニューマネー編集部
(2022年6月8日公開記事)
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