回転寿司業界から「100円寿司」が姿を消しそうだ。サーモンを始めとした人気ネタの仕入れ価格高騰、円安と原燃料費のコスト増で業績が急激に悪化している。10月からの値上げを打ち出したことで、さらに業績に影響を及ぼす可能性もある。
くら寿司、スシローともに、株価はコロナ後の安値まで急落している。国民食とも言える「寿司」が復活するための条件は?
くら寿司から「100円寿司」が無くなる理由
9月6日、くら寿司 <2695> の値上げ報道がメディアを駆け巡った。
値上げは創業来初となる。しかも、「100円寿司」の象徴である、まぐろやサーモンなど定番の「100円皿(税込みで110円)」が値上げで姿を消す。
業界最大手スシローを運営するFOOD & LIFE COMPANIES <3563> とともに10月1日からの値上げだ。
値上げに踏み切らざるを得ないのは、サーモンやいくらなど水産物の価格が世界的に上昇し、さらに円安により海外からの仕入れ価格が上昇しているからだ。インフレによる物流コストや光熱費の上昇もコストアップ要因である。
回転寿司のサーモンはノルウェー産のアトランティックサーモンを使う。輸入は飛行機だ。これまでは最短ルートでロシア上空を通過する直行便だった。ロシアのウクライナ侵攻後はロシア上空を通過できなくなったため、輸送時間も輸送運賃も上がった、航空燃料も値上がりしている。
円安による円ベースでの価格上昇も大きい。豊洲市場の輸入サケ・マス類の7月時点での卸売価格は過去5年の同月平均比で33%も値上がりしている。
また、日本で輸入している水産物の7%程度がロシアの魚介類。寿司ネタでいうと多いのは、いくら、ズワイガニ、ウニ、甘エビなどだ。水産物に関しては輸入規制をしていないが、ウニやいくらは品薄で価格も高騰している。いくらの卸売価格は過去5年の同月平均比で38%高い。
寿司業界は過去最大級の苦境に立たされている
スシローは8月4日に業績を大幅に下方修正した。「おとり広告」問題による顧客減の影響で独自の要因だとの見方が主流だった。
しかし、くら寿司も9月6日に下方修正を発表。寿司業界が過去最大級の苦境に立たされていることが浮き彫りになった。
スシローの株価は9月2日には2,060円と2020年5月以来3年ぶりの安値をつけた。回転寿司は郊外、ファミリー層を中心に展開しているため、コロナによる時短や営業自粛の影響は限定的で外食業界における「コロナ禍での勝ち組」だった。
株価は、2021年4月には過去最高値の5,480円をつけた。わずか1年5ヵ月で株価は62%も下げた。
くら寿司の株価は9月7日に2,800円の年初来安値をつけた。2020年12月以来1年9ヶ月ぶりの安値だ。くら寿司もコロナ禍の2021年7月に過去最高値の4,715円まで買われていただけに、1年2ヵ月で41%も下がった。
復活のカギはウクライナ戦争の行方と為替動向
安くておいしい寿司が復活する条件は、ウクライナ戦争の終結、インフレ沈静、円安トレンドの転換だ。すでにいずれも長期化しているためいつ転機が来てもおかしくない。
そのときは、回転寿司株への投資を考えてもいいかもしれない。
文/編集・dメニューマネー編集
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