「お金のこと」を学ぶのは“学校で先生から”ではなく、“家で親から”という人がほとんどでしょう。ただ、いまの親世代、中でも特に既にリタイアしている60代以上の人たちが常識だと思っていることと、今のそれとは、大きく変わっています。つまり、親世代に言われるがまま、その通りにすると、かえって損するかもしれません。
そんな危険かもしれない“昭和世代のアドバイス”にはどんなものがあるのでしょうか。
親世代のアドバイス1 「子どもが生まれたら学資保険に加入しなさい」
子どもが生まれると、祖父母になった親から学資保険への加入を勧められるケースは少なくないでしょうが、学資保険にはかつてのような貯蓄性は期待できません。
なぜなら、保険会社は保険料の多くを国債で運用しており、昭和と令和では金利に雲泥の差があるからです。たとえば1988(昭和63)年12月28日の10年ものの国債の金利は4.611%ありましたが、これに対して2022(令和4)年9月30日では0.277%です。
昔は高金利が学資保険にも反映されていたので、支払った保険料を大きく上回る満期保険金が受け取れましたが、現在は満期保険金が支払った保険料より少ない「元本割れ」を起こす商品もあります。
子どもの教育費を長期にわたって準備するのは必要なことですが、「教育費の準備=学資保険」と決めつけずに、つみたてNISAなど別の手段も検討してみましょう。
親世代のアドバイス2 「住宅ローンは繰上返済してできるだけ早く完済しなさい」
住宅ローンを組むと高い金利負担をしなければならないため、「できるだけ借入金額は少なく、期間は短く」が鉄則でしたが、いまは低金利時代。無理に繰上返済をする必要はなく、資金の優先順位に応じて判断しましょう。
かつては預貯金の金利も高く、借り入れの金利も高かったのです。たとえば1988(昭和63)年12月30日の旧住宅金融公庫の基準金利は4.4%であるのに対し、2022(令和4)年では多くの金融機関で変動金利なら1%を切っています。1%未満の金利の場合、繰上返済による金利削減効果はわずかです。
かつては住宅購入時には1,000万円もの頭金を準備し、繰上返済で支払う金利を減らすのが得策とされていましたが、今は状況がまったく異なります。
親世代のアドバイス3 「投資は特別な人がするものだから止めておきなさい」
高金利の時代は預貯金でお金を増やせたので、投資や運用をする必要がなく、親世代には投資の知識や経験もあまりない人が多いためか「投資はギャンブル」と決め付けている人も少なくありません。そのためか、「投資は普通の人がするものではない」という人もいますが、投資はギャンブルではありませんし、今や誰もがしたほうがよいものです。
昭和の高金利時代と違い、今は超低金利で、預貯金での資産形成はまったく期待できません。国も「貯蓄から資産形成へ」と舵を切っています。iDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)などの制度で投資による資産形成をサポートするようになりました。
昭和生まれが全員、こうした価値観を持っているわけではないが……
もちろん、昭和生まれといっても現在90代から30代まで幅広く、全員がこうした“古い”価値観にしばられた人だけではありません。
しかし、高度成長期やバブル期に既に大人になって経験した人の中には、こうしたアドバイスを「よかれと思って」子どものために伝えようとする人が少なくないことも事実です。
その好意はありがたく受け取りつつ、最終的な判断は自分で行いましょう。誰のアドバイスであっても、自分のお金のことは自分で決めるべきです。
文・松田聡子(ファイナンシャル・プランナー)
編集・dメニューマネー編集部
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