あなたはわかる?スカイマーク、毎日新聞、JTB……有名企業が「資本金を減らす」2つの理由

2021/08/27 10:00

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スカイマーク、毎日新聞、JTB、元気寿司、カッパ・クリエイト、ANAセールス(現ANAあきんど)、チムニー、はとバス、東京空港交通……。有名な企業がずらりと並んでいますが、これらの共通項は何でしょうか。 答えは直近で「減資」をした企業です。減資と聞くと、マイナスのイメージを持つ人もいるかもしれません。なぜ、このような有

スカイマーク、毎日新聞、JTB、元気寿司、カッパ・クリエイト、ANAセールス(現ANAあきんど)、チムニー、はとバス、東京空港交通……。有名な企業がずらりと並んでいますが、これらの共通項は何でしょうか。

答えは直近で「減資」をした企業です。減資と聞くと、マイナスのイメージを持つ人もいるかもしれません。なぜ、このような有名企業が相次いで減資をしているのでしょうか。

有名企業が減資をする2つの理由

そもそも減資とは何でしょうか。減資とは、資本金の額を減少させる手続きのことです。減資をするかどうかは会社経営における重要な判断ですので、原則として、株主総会の特別決議が必要になります(会社法447条より)。

減資には「有償減資」と「無償減資」の2種類があります。上で触れた有名企業が実施しているのは、基本的に「無償減資」ですので、本稿は「無償減資」を前提に進めていきます。

有名企業が減資をする理由は、大きく分けて、以下の2つの理由が挙げられます。

(1) 財務体質の健全化
(2) 節税(税負担を下げる)

それぞれを解説していきます。

減資する理由(1) 財務体質の健全化

減資をすることによって、累積赤字がある場合は欠損を補てんすることができます。欠損補てんといっても、実際にお金が動くわけではありません。決算書上の「純資産の部」の数字を組み替えるだけです。これによって、決算書の“見栄え”を良くできます。

冒頭の減資をした企業を見ると、旅行、航空、居酒屋、観光などコロナ禍でダメージを負い、業績が苦しい企業ばかりです。毎日新聞に関しても業績低迷が報道されています。JTBが2021年5月28日に発表した2021年3月期の連結決算は、最終損益が1,000億円以上の赤字でした(前期は16億円の黒字)。

苦しい業績を減資で何とか乗り切る(少なくとも決算書の見栄えを良くする)ことが1つ目の理由です。

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減資する理由(2) 節税(税負担を下げる)

2つ目の理由は節税です。これには条件があります。条件とは、減資後の資本金を1億円以下にすることです。なぜ資本金を1億円以下にすると、節税に繋がるのでしょうか。

実は税制上、資本金1億円以下は「中小企業」扱いとなり、様々な税負担が軽くなるのです。具体的には、以下のような恩恵があります。

法人税の軽減税率の適用

法人税は通常23.2%ですが、800万円以下の利益(所得)に対しては15%に軽減されます。

交際費の損金算入可能額

資本金が100億円超の会社は、接待交際費を全額損金に算入できません。資本金が1億円超の会社は、接待交際費の50%までしか損金に算入できません。しかし、資本金が1億円以下の会社は、接待交際費の50%か年間800万円のうち、いずれか多い金額を損金に参入することができます。

繰越欠損金の控除

資本金が1億円超の会社は、過去10年以内に発生した繰越欠損金のうち、半分しか控除できません。しかし、資本金が1億円以下の会社は、全額控除することができます。損益通算できる範囲が拡大するということです。

外形標準課税の減免

外形標準課税とは、資本金1億円超の法人を対象とした法人事業税の課税制度です。事業所の床面積や従業員数など、客観的に判断できる基準によって税負担が増減します。赤字であっても課税されますが、資本金が1億円以下の会社は、外形標準課税の対象外です。

JTBはOK? シャープはNG?

これら以外にも、繰戻し還付が適用になったり、均等割負担が減ったり、資本金1億円以下の会社は色々と優遇されています。JTBのように日本を代表する大企業であっても、上場企業であっても、資本金1億円以下に減資すれば、このような恩恵を受けられます。

減資は会社の信用力の低下につながると言われていますが、JTBの資本金が20億円であろうと1億円であろうと、気にする人は少ないのではないでしょうか。減資によるデメリットが小さいのであれば、1億円以下に減資をすることは、経済的合理性が高いと言えます。

(1)「財務体質の健全化」の緊急性がどれくらい高いのかは各社によって異なりますが、これは(1)を隠れのみにした「有名企業の税金逃れ」と言えなくもありません。実は、経営再建を進めていた頃のシャープは、2015年に資本金を1億円以下に減資しようとしたところ、批判が高まり、断念したことがあります。

シャープは自己努力が足りずに競争に敗れたのでNG、今回は新型コロナウイルスという致し方ない事情があるからOK、ということなのでしょうか。

「日本を代表する有名企業が、中小企業と扱われるように意図的に資本金を減らして、中小企業特例を活用して節税する」──。

これらの事案は、有名企業のモラルが問われているようにも感じます。

文・菅野陽平(ファイナンシャル・プランナー)
編集・dメニューマネー編集部
画像・Korokichi-kun / stock.adobe.com(画像はイメージです)

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