「私は本当にダマされたんでしょうか?」ある詐欺被害者の言葉です。知り合いから勧誘された海外の投資会社に出資して、金銭的な被害も明らかで、同じ会社に出資した人が訴訟を起こしているのもかかわらず、自分が詐欺にあったことが信じられない様子です。
前回は杉山弁護士に「詐欺師の共通点」について、今回は詐欺被害にあった人に共通する特徴をうかがいました。
杉山雅浩・弁護士、ワンピース法律事務所代表
(すぎやま・まさひろ)/上智大学法学部法律学科卒。企業法務、起業家支援、労働問題などを手がける。「詐欺撲滅弁護士」として活動。NHK、フジテレビ、共同通信社などメディア取材・出演実績多数。
若者たちは大人が思っている以上に勉強している
──詐欺被害にあう人に共通する特徴のようなものはありますか?
若者世代の詐欺被害が増えているのは、SNSで知り合った、面識のない人と会うことが珍しくなくっているからでしょう。
若者世代は将来に対して強い不安を抱いています。「この月給で将来暮らしていけるのか」「老後はどうするのか」……。私たちが思っている以上に、若者世代は勉強していて、「副業をしよう」あるいは「投資をしなきゃ」と思っているわけです。
──増えない給料を別の方法でカバーしようということですね。
だから多くの若者が、「副業」や「投資」に手を出すわけですが、どんなに勉強しているとはいっても、社会的な経験がまだ浅いので、SNSを使った詐欺に引っかかってしまうんです。
詐欺被害にあった人たちの多くは、「この人なら絶対に信用できると思っていた」と言います。「勧誘してきたのが友人だったから」とか、「〇〇さんのような優れた人だったから」、「この人は絶対にウソをつかないから」といった具合で決めて失敗しています。
「人」ではなく「中身」が信じられるかどうか
──誰に勧誘されたかで判断していると?
そうです。重要なのは、人を信用するのではなく、商品や中身が信用できるかどうかです。
ものすごく儲かる美味しい話なんて独り占めしたほうがいいのに、「美味しい話がある」って投資案件を紹介されたなら、疑ってかかったほうがいい。「ジュビリーエース事件」(筆者註:2021年11月に摘発された無登録の金融関連商品販売をめぐる投資詐欺事件。大学時代の友人から紹介され投資を迫られた末、消費者金融で資金を借り入れて投資した女性が配当が得られないことを苦に自殺した)では月利20%で金融商品が販売されていました。そんなに儲かる案件なら、自分ひとりでやればいいはずなのに。
──年利ではなくて月利20%ですか?
そうです。そんなのは常識的に考えたらあり得ないんです。なぜなら、月利20%の金融商品は、5年経つと元本は5万倍超ですから。
──複利効果もあって天文学的な利益です。
背景にあるのは、社会経験や経済に関する知識が不足していることでしょう。
失敗案件と同じような投資話は注意
──普通の投資でそんなに利益が出たら、みんながお金持ちになっていますね。
結局、だまされる理由は、勧誘された商品やサービスの中身をよく見ないで、人間を信じているからです。
詐欺被害では、同じ人が同じ相手に何度もダマされるケースが少なくありません。「コンコルド効果」と言われるものですが、「損失を取り返そう」っていう心理につけ込んで、同じ人にいくつも詐欺商品を売りつけるんです。「前の案件は破たんして残念でしたが、救済案件があります」「損した分をこれで取り戻しましょう」と勧誘するんです。
ただ投資詐欺には破たん前提のものがあるんです。長続きしないのは分かっていて、破たんするまでにお金を集めるやり方です。
──失敗したにもかかわらず、また誘いに応じるんですね。
その人を信じているからそうなるんです。繰り返しますが、「〇〇さんに紹介された話だから」というのが一番ダメです。
注意するポイント
・勧誘者ではなく、商品やサービスの中身で判断する(人を信じない)
・中身が社会常識に合致しているかどうか確認する(おいしい話はない)
・一度失敗したら、同じような案件で取り戻そうとしない(焦っても取り戻せない)
取材/文・神部 旬(フリーライター)
編集・dメニューマネー編集部
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