定年退職後……つまり老後のことを現役時代から常に考え、知識をつけておかないと知らないうちに損をするかもしれない。自分が困るだけならまだしも、家族まで巻き込んでしまっては大変だ。定年退職後に安定した生活を送るためには、どんなことに気をつければいいのだろう?
定年後の「働き方で」注意すべき3つのこと
再雇用で働くと年金が減るかもしれない。再雇用の前と後、何が変わるのか理解していないと、生活費が足りず焦るかもしれない。老後の働き方として最低限おさえるべき点が3つある。
注意点1 収入が多いと年金が減らされる
年金は、収入が多いと減らされてしまうことがある。基準となる額は、60歳代前半だと28万円、65歳以降だと47万円。厚生年金と給料の合計額が、1ヵ月あたりで基準額を越すと減額される。
ただし2022年4月以降は制度が変わり、60歳代前半の人の基準額が28万円から47万円に緩和される予定だ。今までは、28万円以上、47万円以上の人の年金は減ったが4月以降は減らず、満額でもらえる。
60歳以降の年金額はその時代の制度次第で変わってくる。よって、親や会社の先輩など、上の世代と同じ額の年金がもらえるとは限らない。再雇用後の生活は、最新の制度を踏まえて考える必要がある。
注意点2 再雇用後は基本給が下がり各種手当がなくなる場合が多い
再雇用で60歳以降も働く場合、業務内容や勤務時間が以前と同じでも、収入が減るのが一般的だ。
基本給が下がるだけでなく、家族手当や住宅手当などがなくなり、収入が半分以下になる人も多い。
ここで、「同じ仕事なのに給料が下がるのは違法では?」と思う人もいるだろう。ただ、自動車学校を運営する会社における正職員定年退職時と嘱託職員時の賃金の問題が争われた、名古屋自動車学校事件の裁判例(名古屋地判令和2年10月28日労働判例1233号5頁)では、基本給が定年退職前の6割以下かどうかが違法の目安とされた。
給料がどれほど下がると違法なのかは、仕事内容などで違うので一概にはいえないが、再雇用後の基本給が6割ほどであれば、違法とは言えない可能性がある。
注意点3 再雇用契約は1年更新のケースが多い
再雇用契約の結び方としてよく見られるのが、1年更新のタイプだ。更新されず、翌年に雇止めにあう可能性はあるのか?
結論としては、正当な理由なく企業が雇止めをすれば基本的に違法となる。65歳までの就業機会の確保が、法律で企業に義務化されているからだ。そのため、理由なく雇止めはできない。
勤務態度が良くない場合や、業績悪化で整理解雇が必要な場合など、企業が契約更新を拒絶できる場合もあるが、基本的には再雇用後に65歳まで働き続けられる。
定年退職前に理解しておくべき「お金」に関する3つのこと
国の制度をうまく使うと退職後の費用を抑えられる場合がある。逆に知らないと、支出が増えたり受け取れるお金をもらい損ねたりして、ライフプランが狂うかもしれない。老後の生活に余裕を持たせるにはどのような手続きが必要なのか?
健康保険 退職後に入る制度によって保険料が変わる
定年退職後に国民健康保険に入るか、勤務先の健康保険に任意継続加入するか、家族の扶養に入るか、いずれかで健康保険料が変わってくる。働いている家族がいて扶養に入れる場合には保険料はかからない。
国民健康保険に入る場合は、会社の健康保険のように扶養家族の考え方がなく、在職中とは違って家族の保険料がかかることがある。勤務先の健康保険に継続加入すれば保険料が安く済む場合があるので、退職前に保険料を比較しておきたい。
国民健康保険料の計算式は各自治体のサイトで確認できることが多く、任意継続の保険料は一般的に在職中の2倍かかる。任意継続の場合は退職後20日以内に手続きが必要だ。
雇用保険 再就職や資格取得で手当をもらえる場合がある
定年退職後に何か新しいことを始めたい場合、費用がネックで断念する人がいる。しかし、雇用保険を使うと費用負担を抑えられることも。
例えば資格取得のための講座受講料が10万円の場合、雇用保険から2割補助されれば自己負担は8万円。専門的な内容で5割補助されるケースでは実際の負担額は5万円となる。
また退職後に再就職して給料が下がった場合、手続きをすれば65歳まで給付金が出ることがある。
退職後のライフプランを考える上では雇用保険の知識が役立つので、厚労省のサイトで制度の仕組みを確認しておきたい。
老齢年金 受給開始年齢を65歳から70歳に変えるほうが得な場合がある
例えば定年退職時点で十分な貯蓄がある場合、公的年金をすぐに受け取らなくても生活に困らない。もらっても使わないのであれば、実際に使う時期から受け取るように受給開始年齢を遅らせて、年金額を増やすのも一つの方法だ。
65歳より遅らせると1ヵ月につき0.7%増額され、仮に5年遅らせて70歳からもらえば42%増額される。年金額が80万円なら約113万円に増える計算となる。
いつから年金を受け取ると最も家計のプラスになるかは人によって違うので、FPなどの専門家に相談して退職前から備えておきたい。
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定年退職前に理解しておくべき3つのこと──知らないと損をするかも?
文/編集・dメニューマネー編集部
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