投資やビジネスで成功する人は、朝の時間を有意義に活用している──。そう聞けば誰もがうなずくことだろう。誰もが忙しい朝、特に出勤前の慌ただしいひとときをどう過ごすかは、その日を充実した1日にできるかどうかを決める。朝のゴールデンタイムである7時台は特に重要だ。前日から朝までに起きた世界のニュースをおさえつつ、起こりつつあるトレンドやこれから起きる時代の変化、その見方をインストールする。朝食をとり身支度を整えながら、そんな効果的な情報収集ができれば、その日のスタートが成功するのは間違いない。
投資でビジネスで勝ちたい投資家やビジネスパーソンに注目されているのが、BSテレ東で平日の朝7時5分から55分まで放送されている「日経モーニングプラスFT」。出勤前の慌ただしい時間帯に、コンパクトにニュースを伝えつつ、トレンドや世相をいち早く解説する特集にも力を入れるニュース番組だ。その番組の中心にいるのが、メインキャスターの八木ひとみ氏と解説委員の豊嶋広氏(八木氏は現在、産休中で末武里佳子氏、天明麻衣子氏、須貝茉彩氏がキャスターを務めている)。
仕事、生活を大きく変えたコロナ禍が落ち着きを見せつつある中、ロシア軍のウクライナ侵攻、円安、物価高、米国の株価下落など、先行きの不透明さが増している。こうした中だからこそ、投資やビジネスに役立つ情報が得られる、信頼のあるソースが求められている。YouTubeなどのSNSが投資情報の配信でも大きな存在感を見せつつある中で、テレビというメディアはどんな立ち位置を目指し、個人投資家にどのような価値を提供するのか。番組づくりの裏側を聴いた(聞き手:濱田 優・dメニューマネー編集長/写真:森口新太郎)。
インタビュー・前編
豊嶋 広(としま・ひろし) BSテレ東解説委員 キャスター/1986年日本経済新聞社入社。編集局商品部、東京経済部、金融部、日経CNBC、電子編集本部などで勤務し、2016年4月から現職。17年4月から「日経モーニングプラスFT」を担当。
八木ひとみ(やぎ・ひとみ) メインキャスター/2008年YAB山口朝日放送入社(アナウンサー)。TBSニュースバード、日経CNBC、NHK BS1などでキャスターを務めた。2018年3月より「日経モーニングプラスFT」を担当。
経営者の話をスタジオで直接、聴くことの意味
──「日経モーニングプラスFT」の直前には、テレビ東京、BSテレ東の人気看板番組である「モーサテ」(Newsモーニングサテライト)が放送されています。その直後の番組ということで意識していること、番組作りで注力されていることは何でしょうか?
豊嶋 私が2017年に番組に参加して以来変わらないのは、ターゲットを明確にビジネスパーソンと個人投資家にして、彼らに、朝起きた時に一番知っておいて欲しい情報をそろえることです。
7時台は朝のゴールデンタイムで、 NHKの7時のニュースが圧倒的に強く、民放地上波がワイドショーをいずれも力を入れてやっている時間帯です。朝の番組は特に視聴習慣が大事なのですが、内部の調査でも継続視聴率は高いことが分かっているので、その点では手応えを感じています。
八木 モーサテとの差別化、オリジナリティを意識しています。50分という短い中で、10〜15分の特集を組んだり、FT(フィナンシャル・タイムズ)の情報を紹介したり、有識者や企業のトップのお話を聞いたりと盛りだくさんなのですが、そんな中でも、「これだけは知っておいて欲しい」というニュースをコンパクトにまとめ、情報収集に役立つ番組を目指しています。キャスターとして大事にしているのはテンポ。 朝の雰囲気にあわせてテンポよく情報を伝えて、番組があっという間に終わったな、もうちょっと見たかったなと思われたらいいなと。
──コロナ禍で番組の作り方や視聴者からの反響に変化はありましたか?
豊嶋 これは局の方針でもありますが、制作体制をチーム分けして、全員感染して番組づくりが続けられなくなるといったことが起きないようにしています。
八木 7時5分からという放送時間帯は、マーケット情報としては早いほうではありません。金融機関などでは出勤されている方もいらっしゃる時間なので。ただコロナでテレワーク、在宅勤務が増える中で、視聴者が増えてきた、変わってきたという印象はあります。
──TV番組でもオンラインでの出演が珍しくなくなってきました。番組作りで大変なことはありますか?
八木 遠方に住んでいらっしゃる方にも出ていただきやすくなったように思います。コロナ禍が広がってすぐの頃は、出演者の自宅のネット環境やアプリの品質も高くなく、接続が途中で切れるというようなこともありましたね。
豊嶋 コロナ禍とは関係ないですが、放送時間中に北朝鮮がミサイル発射することが時々あって、こういった緊急時は放送がテレビ東京の報道局主導に切り替わるので、スタジオにゲストに起こしいただいたのにお話が聞けないということがありましたね。
──VTR出演ではなく、生出演してもらうことにこだわっていらっしゃるそうですね。企業経営者も朝早い中で多数出演されている印象があります。
豊嶋 局の方針や感染の拡大状況にもよりますが、基本的にはスタジオに来ていただくことにこだわっています。
経営者をお招きする意義は、貴重な投資情報がうかがえることにある。社長ほどその会社に詳しい人はいません。どんな優秀なアナリストも勝てない。
ただ実際に来ていただいて、何を引き出せるかは、我々の腕次第。個人投資家には、上場企業の社長さんの話を直接聞く機会はなかなかありません。投資で「情報の非対称性」が問題視される由縁です。
そこで我々がそういう場を番組で作るわけです。広く同時的に情報を出し、一人でも多くの方に視聴してもらうことで、かっこいい言い方をすると、「資本市場の民主化」に取り組んでいるつもりです。
──豊嶋さんはもともと新聞記者でいらっしゃいますが、テレビはまた別物ではないかと思います。変えていること、変えていないことは何でしょうか。
豊嶋 新聞記者を30年以上やっていますが、テレビでもコアコンテンツ、取材の本質的なやり方は変えていません。ただ、おっしゃる通り違いはあって、情報の発出の仕方は大きく異なりますね。
一般的に活字メディアは、受け手が主体的にアプローチするのに対し、動画は受け身。テレビや動画は単純なメッセージを強烈に伝えるのにはとても有効ですが、新聞よりもテレビのほうが伝える情報を絞らないといけません。
だから、例えば特集を作る時も、何か一つでも記憶に残ってもらえればいいと思って作っています。よくて2つで、欲張らない。話が経済、マーケットで込み入った内容も多いので、どう噛み砕くかに腐心しています。
八木 分かりやすさは重要視していますね。朝の忙しい時間帯なので、耳で聴くだけという視聴者もいらっしゃるでしょうけど、テレビなので、見やすく、分かりやすいチャートもたくさん作って出すようにしています。いかにシンプルにして分かりやすくするか。スタッフみんなで考え、議論しながら作っています。
それと私自身は、常に「それってどういうことですか?」という視点は大事にしています。我々は何回も打ち合わせをして、先方の話を理解していますが、視聴者は初めて聞くわけなので。常に「これはどう思われるか、みんな知っていることか?」と立ち返って考えるようにしています。
取材/文・濱田 優(dメニューマネー編集長)
編集・dメニューマネー編集部
写真・森口新太郎
(2022年6月15日公開記事)
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