市場のストーリーが示す「中央銀行が特別視される理由」【連載 第3回】

2021/12/29 11:00

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今では世界中のニュースをほぼリアルタイムで読むことができますが、金融や経済のニュースは難しい言葉も多く、「結局このニュースを資産運用にどう活かせば良いのか分からない……」という人も多いでしょう。本連載では資産運用初心者向けに、経済ニュースをどのように読み解いていけば良いか解説していきます。 「21マスと4人プレイヤー」

今では世界中のニュースをほぼリアルタイムで読むことができますが、金融や経済のニュースは難しい言葉も多く、「結局このニュースを資産運用にどう活かせば良いのか分からない……」という人も多いでしょう。本連載では資産運用初心者向けに、経済ニュースをどのように読み解いていけば良いか解説していきます。

「21マスと4人プレイヤー」という考え方

第1回で、金融市場と呼ばれるものの正体は、21マスのうえで、4人のプレイヤー(中央銀行、金融機関、機関投資家、個人投資家)によって行われるマネーの動きそのものと説明しました。

第2回では、4人のプレイヤーは原則として、その時々の「市場のテーマ」を念頭に置きながら、21マスのうえでマネーを動かしていると説明しました。「現在のテーマは何か」を判断するためには、「市場のストーリー」を理解する必要があります。

第3回は「市場のストーリー」について解説します。

2006年頃からの15年分を理解すれば十分

「市場のストーリー」といっても、近代金融史100年分を勉強する必要はありません。資産運用初心者の場合は、2006年頃をピークとした米国不動産バブル(サブプライム危機)からの15年分を理解しておけば十分でしょう。

なぜなら、サブプライム危機以前と以後では、金融市場のルールや常識が大きく変わったからです。ここからは、その15年分をぎゅっと凝縮して解説します。

低所得者層の貸し倒れが始まった米国不動産市場

すべての始まりは、2006年頃をピークとした米国不動産市場です。当時の米国では、不動産価格は上がり続けると信じられており、極めて不動産ローンが通りやすく、誰でも住宅(マイホーム)を購入できる状況でした。

ある程度の所得や資産がある人が購入する分には問題ないのですが、住宅を購入した人には、周辺の貧しい国から出稼ぎに来ているような低所得者層(サブプライム層と呼びます)も多く含まれていました。

しかし、低所得者層に身分不相応の融資をしているわけですから、次第に返済できなくなる人が増えてきました。それも不動産価格の下落と相まって、急激に増えてしまったのです。貸したお金が返ってこなくなるのですから、金融機関は困ります。

実際に多くの金融機関が破たんしました。有名なのはリーマン・ブラザーズでしょう。同社の破たんをきっかけにして、世界の金融市場では売りが売りを呼び、資産価格は大きく下落しました。サブプライム危機と言うよりも、日本では「リーマンショック」と呼んだほうが分かりやすいかもしれません。

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救世主はFRB(中央銀行)

中央銀行、金融機関、機関投資家、個人投資家の4人のプレイヤーが21マスの金融市場を動かしていると述べましたが、100年に一度と呼ばれる金融危機で、金融機関は自力では再建できない深手を負いました。

そこに救世主として現れたのが、4人のプレイヤーのひとりである「中央銀行」です。米国の中央銀行であるFRBは、金融機関の救済に乗り出します。金融機関は多くの重要な取引に関わっているため、これ以上金融機関が破たんすると、経済全体が停止しかねないためです。

具体的には、FRBが新たな米ドルを大量に増刷し、そのお金で、サブプライム危機で金融機関が作ってしまった不良債権を本来の価値よりも大幅に高い価格で買い取りました。いわゆる「量的緩和」と呼ばれるもので、当時としては前代未聞の画期的な対策です。

「自分が作った損失は自分で尻拭いする」のが資本主義の大原則ですので、税金で金融機関を救済することに一定の批判はありましたが、金融危機の収束には十分な効果がありました。

最も重要なニュースのひとつがFRBの動向

この量的緩和の登場で、金融市場の常識は大きく変わりました。中央銀行が量的緩和をすることで、21マス上を動く「マネーの量」はサブプライム危機以前と比べて圧倒的に増えて、結果としてほとんどの資産価格が大きく上昇しました。

2021年5月執筆現在においても、FRBは大量の資産を保有したままです。むしろ、コロナ禍においてさらなる量的緩和を実行したので、保有額はさらに大きく伸びています。

中央銀行は4人のプレイヤーのなかで、自分でお金を刷ることができ、そのお金で他のプレイヤーを助けることができます。神様とまでは言いませんが、極めて特別な能力を持つプレイヤーです。

実は、2006年頃をピークとした米国不動産バブル以降の金融市場15年史において、その時々の「市場のテーマ」は、ほぼすべてが中央銀行(主にFRB)関連のテーマだったと言っても過言ではありません。

経済ニュースを読み解くときに、最も重要なニュースのひとつが「今後、FRBはどのように動くのだろうか」ということなのです。この事実とその理由(歴史的背景)を理解しておくだけで、経済ニュースはぐっと読み解きやすくなります。

執筆・菅野陽平(ファイナンシャル・プランナー)
編集・dメニューマネー編集部
(2021年5月21日公開記事)

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