人気FPコンビが伝授!子供が身につけるべき「お金の考え方」──金利7.5%の時代とは違う!【特集・親子で考える「お金」】

2022/08/13 08:00

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白衣姿で一見、「お医者さん?」と思える女性2人組、実はファイナンシャルプランナーの竹内かおりさん(キャサリン、写真左)と西岡奈美さん(ナンシー、同右)が小学生向けの「お金の考え方・使い方」に関する書籍を上梓した。 中学年、高学年向けにそれぞれまとめられた『小学3.4年生向け お金の考え方・使い方』『小学5.6年生向け

白衣姿で一見、「お医者さん?」と思える女性2人組、実はファイナンシャルプランナーの竹内かおりさん(キャサリン、写真左)と西岡奈美さん(ナンシー、同右)が小学生向けの「お金の考え方・使い方」に関する書籍を上梓した。

中学年、高学年向けにそれぞれまとめられた『小学3.4年生向け お金の考え方・使い方』『小学5.6年生向け お金の考え方・使い方』(アルク)の著者である二人は、これまでに行ったお金の講座実績数が330講座を超える。また実際に子育て中でもある。親子で過ごす時間が長くなる夏休みに、あらためて「お金の教育」について自分ができること、家庭ですべきことについて実際に家庭でやっていることなどを訊いた。(聞き手:張替千滉・dメニューマネー編集部)

プロフィール
(写真左から)竹内かおりさん(キャサリン)、西岡奈美さん(ナンシー) ファイナンシャルプランナー。子ども向けマネー教育・大人向け投資教育をする株式会社マネイクを二人で設立。「金融教育を公教育に」「お金の話をかんたんに!おもしろく。投資をもっと身近に」をモットーに、お金のお医者さんとして公立小学校などで授業を行っている。テレビ出演、各種メディア掲載実績もあり。二人とも証券会社出身で、小学生と中学生の子供がいる。

【特集・親子で考える「お金」
・1 なぜ「うんこお金ドリル」が生まれたのか?金融庁インタビュー
・2 イギリスでは小学生にお金をこう教えている 在住ライターレポート
・3 人気FPコンビが伝授!子供が身につけるべき「お金の考え方」(本記事)
・4 米国在住20年の筆者が見た、アメリカのお金の教育2つの特徴」
・5 フェラーリ、ディズニー株をプレゼント?「お金持ちの金融教育」

300以上の「お金の授業」を一緒にやっている二人組はそういない

──まず、なぜキャサリン、ナンシーと名乗ってらっしゃるんですか?白衣を着て「お金のお医者さん」として活動され始めたきっかけも教えてください。

キャサリン 小学生に名前を覚えてもらえるからですね。

受講生は小学生が多いのですが、私たちは学校の先生と違って子供たちと1度しか会えない事が多いので、1回で覚えてもらえるようにそう名乗るようになりました。

ナンシー 白衣も同じ理由ですが、ファイナンシャル・プランナーが「お金のお医者さん」と言われることから白衣を選びました。

──今春出された『小学5.6年生向け お金の考え方・使い方』(アルク)はどういう経緯で出版されたのでしょうか?

キャサリン これまで学校や企業など実際に現場に300回以上行き、お金の授業をしていることを知ってくださった出版社から声をかけてもらったことです。

出版社の担当者さんがなぜ今回、お金について学ぶこと、金融教育をテーマに企画されたのかも聞いたのですが、世界的にSTEM教育(STEAM とは、Science(科学)Technology (技術)Engineering (工学・ものづくり)Arts (芸術・リベラルアーツ)Mathematics (数学)の頭文字をとった造語で、理数系の能力に加え、表現力や想像力といった非認知系能力も対象にした教育理念のこと)が注目されていること、世界とお金の関係が変わっている中でお金について学ぶことがとても重要だと感じたことだそうです。

ナンシー 金融教育に取り組んでいる個人や団体はたくさんありますが、私たちの特徴は、必ず私たち二人が行くことです。依頼者側が講師を指名できるわけです。他の団体の中には、講師派遣の依頼をしても、誰がくるか分からないところもあるそうですが、そこが大きな違いだと思います。二人で300以上の授業を経験しているコンビは、ほかにはそういないと思います。 そうした現場の数と、金融庁や多くの公的施設でも講師を経験している点を評価してくださったのではないでしょうか。

授業風景_人気FPコンビが伝授!
金融庁で小学生親子を対象に開いた授業の様子(提供写真)

──どんな反響がありましたか

キャサリン 一番多いのは、「親子でお金について一緒に話し合うきっかけになった」というものですね。

親子でお金の話をするきっかけって、意識しない限りほとんどないと思うんですよ。そもそも家でお金の話をするなんて……という雰囲気があるのに、最近はキャッシュレスになって、お金・現金そのものを見ることも減っています。

昔ならレジで現金を出すとか、親が給料を現金で持って帰ってきたということもあったと思います。私が子供の頃はまだ、父は封筒に入った給料を持って帰っていましたが、今の子ってそういう機会はないと思います。

ナンシー 「子供だけではなく大人も勉強になる」という声もいただきました。地元自治体の教育委員を務めているんですが、委員会の会合で、「まず教育をする先生がお金について知るべきことが重要だ」という意見が出ましたが、まさにその通りだと思います。

ゆうちょの金利が7.5%あった時代とは違う

──親として大人として、子供にお金について教える自信がある人はそんなに多くないと思います。まず大人が学ばなければいけないですね。

キャサリン 大人の金融・投資教育の重要性という意味でいうと、昔は学ぶ必要がなかったんだと思うんですよ。なぜかというと、金利が高かったからです。

たとえば、お金の運用なんて深く考えなくても、銀行や郵便局に預けてれば老後は安心という時代があったわけです。今からでは信じられないでしょうが、それこそゆうちょ(郵便貯金)は1974(昭和49)年には定期の金利が7.5%もあった。だから投資や資産運用なんて自分で学んでする必要がなかった。

それが今では、ゼロ金利、マイナス金利といわれている時代で、銀行や郵便局に預けているだけではお金は増えません。さらに働いても給料が上がりにくいし、年金も十分ではないので老後も働き続けなければいけない。「老後には2000万円必要です」というような話もあって、本当にそれが必要なのかも、どうやって作るかも分からない。そんなお金についての不安だらけの中で、不安を払しょくするためにはやはり学ばなきゃだめだという時代になってるんですよ。

ナンシー キャサリンが今、「資産運用しなくてもよかった時代があった」と言いましたが、正確にいうと、自分じゃない誰かが資産運用をしてくれていたわけです。預けた銀行や企業がお金を増やしてくれていたわけです。だから、定期にお金を預けた本人は資産運用しているつもりはなかったかもしれないけど、つまり資産形成をしてたんです。

ただそれが今は、お金を預貯金に預けているだけでは増えない時代だから、自分で運用しなきゃいけない、株式とか投資信託など投じる先を自分で考えて決めなきゃいけない時代になったんだと思います。

だから、今高齢の方の中には「投資なんてやめときなさい」っていう方もいますが、昔の大人たちも実は投資をしていたんですよ。あまり考えずに銀行にお金を預けるだけでよかっただけで。ただそうした時代でも、「普通預金よりも定期預金のほうが金利が高いから定期にしよう」って選択していたはずなんです。

コロナ禍で機会の減少…お金の価値観を学ぶ必要性

インタビュー風景_人気FPコンビが伝授!

──学校外、家庭でどのような教育をする・知識を伝えることが重要なのか?

キャサリン 家庭でお金の話をすることですね。学校教育では、先生は中立的な立場から、いろいろな見方や考え方について一般論で話すしかありません。

ただお金についての考え方や価値観はたくさんあって、正解もない。そうした部分は家庭でするのがいいと思います。子供にとっては、いろんな大人の意見や価値観に触れることが重要だと思います。

ナンシー 以前は小学校などで、先生や保護者以外の地域の大人の話を聞く機会がありました。何かを教わるというより、いろんな人の価値観があることを知る貴重な機会だったのですが、 コロナ禍でそういう機会も減っています。

あと、かしこまってお金の話を直接しなくても、お金を使う姿を子供は見てます。子供は鋭いので、買い物などでお金を出す時にちょっと話すだけでいいと思います。クレジット払いする時に、「今、クレジットカードで払うよ」って言いながらカードを出して払うところを見せるだけでもいい。

──日常で気をつけるべきこととは?

ナンシー お金の話をする時に重要なのは、ネガティブではなくポジティブに伝えることです。たとえば「税金を払わなかったらこんな大変なことになるよ」というんじゃなく、「税金を払っているから、ゴミを運んでくれたり、火事になったら消防士さんが来てくれるんだよ」と言った具合です。子供に対する教育に限らず、「老後、お金が足りなくなりますよ」といったネガティブなアプローチが多いのにも違和感を覚えます。

お金って本来、自分がやりたいことを叶えるための道具です。だから子供には、お金の使い方を考えることは、自分のやりたいことをどう叶えるか考えることだということが伝わって欲しい。ちょっとした言い方に気をつけて、ポジティブな伝え方をしないと、子供がお金というものをネガティブに考えるようになってしまう。

家計の話をするにしても、「お金が足りないからこれができない」という言い方じゃなくて、「これだけのお金があるからこれができるよね」っていう言い方がいいと思いますし、そういう考え方にして欲しいですね。

夏休みに家庭でできること

──夏休みに実際に家庭でどんなことをすればいいのでしょうか? お二人がしていることも含めて教えてください。

ナンシー 我が家では、夏の家族旅行の予算はいつも家族で考えています。交通費はいくらなのか、宿泊はいくらなのか?行先で遊ぶお金、食費はいくら要るのかなどを、旅行サイトなどを見て一緒に考えて、予約します。

その過程で子供たちも、「ホテルも駅に近いと高いね」とか「新幹線も時間帯によって高いから、時間ズラしたら安くなるね」ということに気づくんですよ。「なるほど。こういう値段の差が出るんだ」という学びがある。

キャサリン 夏休みにするといいかもしれないのは、欲しいものリストの夏休みバージョンを作ることですかね。欲しいものリストって、自分の欲しいものを箇条書きで書き出してみるものなんですけど、夏休みには夏休みなりのやりたいこと、欲しいモノがあると思うんです。

今は物も情報もあふれているので、自分の予算の中で何を買うのか、するのかは優先順位をつけてしっかり考える必要があります。順位をつける上で「ほしい物リスト」は子供にも分かりやすいんです。お盆は帰省でおじいちゃん、おばあちゃんに多めにお小遣いをもらうようなことがあるなら、それをきっかけに付けてみるといいと思います。あとはお年玉でもそうですし、普段の小遣いの使い方でもつけてみて欲しいです。

──「ほしい物リスト」は気軽にできそうですね。もう少しレベルをあげてできることはありますか?

キャサリン あとは、もうちょっと投資や運用寄りのことでいえば、夏休みにお子さんと好きなサービスや商品を出している会社を一社見つけて、株価をチェックしてみるのはどうでしょうか。

上場会社限定にはなりますが、夏休みの間だけでも親子で株価を見ていれば、ニュースに興味がわいてくると思います。

ナンシー 「うちの子はまだそれは早い」という場合は、お祭りとかイベント時にお金を渡してみるのもオススメです。たとえば500円渡して、「使い方は自分で考えてみて」といった具合です。予算があると、子供は使い道を真剣に考え出しますよ。

もしかしたら子供が失敗するかもしれませんが、それでもいいんです。500円とか1000円というリスクを限定した中で、子供に考えてやらせてみることです。

そういうことをしていないと、大人になったときに使い道を考えずにスマホゲームに信じられない金額を課金してしまったり、生活費のことを考えずにバイト代を使いきってしまったりというようなことが起ってしまう。

キャサリン 失敗すること、特に「現金で失敗する」ことが大事だと思います。キャッシュレスだとどうしてもお金が目に見えないので、目に見えるお金を手渡してなくなることが大事。記憶の残り方が違うと思います。キャッシュレス決済に慣れることも大事ですが、まずは小学生くらいのうちに現金で経験させることです。

子供のうちにお金に関する原体験をさせること、中学とか高校ではなく、小学生のうちだからできる失敗を経験させて欲しい。子供のうちの経験は、大きくなってお金の管理や運用ができるようになる上でとても重要な要素だと思います。

キャサリンとナンシーの金融教育

https://www.katherineandnancy.com/

取材/構成・張替千滉(dメニューマネー編集部)
編集・濱田 優(dメニューマネー編集長)

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