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なぜ「うんこお金ドリル」が生まれたのか?金融庁・金融知識普及係に聞いてみた【特集・親子で考える「お金」】

2022/08/11 09:00

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もともと漢字ドリルだった「うんこドリル」(文響社)は、算数など学習用のドリル以外にも、あらゆるテーマのドリルが誕生。既に100点以上、950万部を超える人気シリーズだが、中でも異色なのが金融庁とのコラボで登場した「うんこお金ドリル」だろう。 おなじみのうんこ先生のほか、うんこ学園のキャラクターたちが「買い物に行く」「自

もともと漢字ドリルだった「うんこドリル」(文響社)は、算数など学習用のドリル以外にも、あらゆるテーマのドリルが誕生。既に100点以上、950万部を超える人気シリーズだが、中でも異色なのが金融庁とのコラボで登場した「うんこお金ドリル」だろう。

おなじみのうんこ先生のほか、うんこ学園のキャラクターたちが「買い物に行く」「自分でお菓子屋をつくって商売する」「貯金する」「寄付する」「投資する」などのケーススタディーを通して、お金の基本について学べるというもの。今春、印刷した紙版を発行したこのお金のドリルが6月に大バズり。配布が追い付かなくなり、今では一時的に従来のオンラインアプリ版とPDFでのダウンロード版のみの提供となっている。

金融庁というお堅いイメージの省庁が、うんこドリルとコラボした狙いとは?また自宅でどんな“お金の教育”をすればいのか?──担当である金融庁総合政策課の津曲眞樹課長補佐(取材当時)に訊いた。(取材/聞き手・濱田 優 dメニューマネー編集長)

(トップ写真=金融庁総合政策課金融知識普及係のメンバー(右上から時計回りに)津曲、日水、渡邊、吉田の4氏、うち津曲、渡邊両氏は民間出身)

【特集・親子で考える「お金」
・1 なぜ「うんこお金ドリル」が生まれたのか?金融庁インタビュー
・2 イギリスでは小学生にお金をこう教えている 在住ライターレポート
・3 人気FPコンビが伝授!子供が身につけるべき「お金の考え方」
・4 米国在住20年の筆者が見た、アメリカのお金の教育2つの特徴」
・5 フェラーリ、ディズニー株をプレゼント?「お金持ちの金融教育」

ツイッターがきっかけで注文数が1000倍になり無料配布中止

──金融庁が「うんこドリル」とコラボというのはちょっと驚きでしたが、どういうきっかけで誕生したのでしょうか?

出版元である文響社さんは、消防庁や地方自治体など官公庁とコラボして「交通安全」や「防災」「SDGs」などのドリルを出されていて、その一環でご提案をいただいたのがきっかけです。

最初に2021年の3月にアプリ版を出した後、2022年の3月に小学生向けの冊子版『うんこお金ドリル -生活編-』『うんこお金ドリル -経済編-』を出しました。

うんこお金ドリル(文響社)
(画像=うんこお金ドリル(文響社))

──6月に印刷版が在庫切れになったとニュースになっていました。反響が大きかったようですね。

最初に2021年3月にオンラインアプリ版を出した時にも、フィナンシャルタイムズが取り上げてくれて話題になりました。この時はFTで記事になったこともあって金融業界等からも反響が大きかった。

今年、印刷版を公表した後、6月中旬にウェブサイトでの冊子の申し込みがそれまでの1000倍くらいになり、配布の中止を発表したのですが、きっかけはTwitterで広まったことでした。

──「うんこお金ドリル」は小学生向けで面白い内容ですが、どういう方針でまとめられたのでしょうか?

「うんこお金ドリル」が下敷きにしているのは、「金融リテラシー・マップ」です。これは、日本の金融リテラシー普及のハブである、金融広報中央委員会(編注:知るぽると。事務局は日銀内にある)が事務局を務めた金融経済教育推進会議がまとめたもので、「最低限身に付けるべき金融リテラシーの項目別・年齢層別スタンダード」を示したものです。年代ごとに、どういったことを理解しておくべきかをマッピングしていて、これに沿って文響社さんと話し合いながらまとめました。

──「最低限身に付けるべき金融リテラシー」とはどんなものなのでしょうか?

主に4つの分野に分かれています。「家計管理」、「生活設計」、「金融知識及び金融経済事情の理解と適切な金融商品の利用選択」および「外部の知見の適切な活用」です。それぞれの分野で、小学生、中学生、高校生、大学生、そして若年社会人、一般社会人、高齢者と年齢層ごとに、「こういうことができて欲しい」「こんな能力を身につけることが望ましい」という内容がまとめられています。

金融教育への関心の高まりを実感している

──ドリルがバズった背景には、今年に入って金融教育への注目が高まっていることもあると思いますが、いかがですか?

特に4月に改正民法が施行されて成年年齢が18歳に引き下げられたこと、高校家庭科の学習指導要領が改訂され、資産形成なども盛り込まれたこと、これらを背景にメディアで取り上げられたことで、金融教育への関心は高まったと感じています。

──高校でももともとお金の教育は行われていましたが、より投資に関わる内容も入って、教える先生は大変ですね。

そこで金融庁では今年3月に、高校の先生にお使いいただける指導教材を出しています。金融庁は高校や大学を中心に全国の学校に出向いて金融リテラシーの授業をしているのですが、そこで使っていた資料を、高校などで家庭科を教えていらっしゃる先生方のアドバイスをいただいて、使いやすい形で作りました。

パワーポイント形式で配布したところ、高校の先生方だけでなく、一般の方にも勉強になると注目されました。それが4月のことです。

さらに5月には、「基礎から学べる金融ガイド」(編注:金融経済教育を推進するため、一般社会人やこれから社会人となる大学生、高校生を対象とした金融取引等の基礎的知識に関するガイドブック。40ページほどの冊子で、PDFが無料公開されている)という、中学生から高齢者の方まで広く対象にしたガイドブックがあって、これもネットで話題になったんですね。

基礎から学べる金融ガイド(金融庁)
(画像=基礎から学べる金融ガイド(金融庁))

そして6月に「うんこお金ドリル」がツイッターでバズって、対象の依頼をいただいたので、配布が追い付かなくなってしまった。こうした流れを振り返るにつけ、金融教育に関する関心が高まっていることを実感していますね。

──先生方も教える内容が増えたり変わったりして、いろんな質問が寄せられるのではないでしょうか?

よくいただく質問としては、「資産形成について詳しくないので金融商品の仕組みについて教えて」というものですね。「そもそもなぜ教えるのか」といった基本から、「分かってはいるけど改めて聞きたい」というご要望もあります。

ただ金融庁としては、資産形成だけを取り上げて授業して欲しいわけではなくて、家計管理とかライフプランニングなど、従来家庭科でやってきたこと、流れを踏まえて教えていただきたいと思っています。

なぜ「家庭科」で金融教育をするのか?

民間から任期付きで金融庁に入庁した津曲氏はOECDの金融教育に関する国際ネットワーク諮問委員でもある。22年7月末までの約2年半、民間人の視点で金融知識普及、リテラシー向上に務めた
(画像=民間から任期付きで金融庁に入庁した津曲氏はOECDの金融教育に関する国際ネットワーク諮問委員でもある。22年7月末までの約2年半、民間人の視点で金融知識普及、リテラシー向上に務めた)

──お金の授業が「家庭科」である日本の金銭教育の特徴かなと思いましたが、その点はいかがでしょうか?

私は海外歴が長いのですが、アメリカでも家庭科にあたるホームエコノミクス(home economics)があります。日本も同じことで、家庭科ってその名の通り家庭を管理・運営する科目なので、お金の話は絶対切り離せないですよね。

学習する内容も金融リテラシー・マップの4分野に沿っています。土台としては「家計管理」や「生活設計」(ライフプランニング)の基本を身につけてもらい、その上で、社会に出て金融商品に触れるようになった時のために、「金融知識及び金融経済事情の理解と適切な金融商品の利用選択」ができるようになること、迷った時、困った時には「外部の知見の適切な活用」できることを知ってもらう内容です。

──家庭科が本来そういう科目だという指摘にはなるほどと思いました。リテラシーの向上ってゴールや達成が見えない取り組みですが、どう評価されているんでしょうか。

何をもって達成とするかは難しく、かつ百点満点も難しいですよね。ゴールを明確にするのも大事ですが、それより自分が必要だと思うときに、誰かに聞けることを知っている状態を目指したいですね。金融は新しいものがたくさん出てくるので、一度習得して終わりというものではないですし。

それにお金やその知識が必要になるタイミングは人それぞれで、そのタイミングでないと知識が身につかないとも言えます。例えば高校生に住宅ローンについて、簡単に説明はしますが詳しくはしません。将来、家を買いたい、住宅ローンを借りたいと思った時に、外部知見を活用できることを知っておけばいい。トラブルの話も同じで、相談できるということ、相談できる人・団体があることを知らないから一人で悩んでしまうんです。

──ただ知識をつければいいというわけではないんですね。

リテラシーの定義は「知識及び判断力」です。知識があるかどうかだけではなくて、適切な判断ができることもリテラシー。何か困った時、迷った時に、外部の適切な専門家に相談できることも大事。そういう判断ができることも含めて、まずは地道にアプローチすることが大事だと思っています。

──若者へのアプローチを考えたときに思い浮かぶのがYouTuberをはじめとしたインフルエンサーです。投資やお金について解説したYouTuberは多い印象です。

中には両@リベ大学長さんなど、金融庁の資料がしっかりとベーシックな部分をカバーしていると好意的に取り上げてくださるインフルエンサーもいらっしゃいます。そうした方々と金融庁が一緒にやるかはともかく、こうした勝手連的な、我々の取り組みにバリューを見出して取り上げてくださる方の活動はとても大事に思っています。

金融庁にしても、知るぽるとや、全銀協など金融関連の団体も、学校などに教えに行ける人の数は限られています。広く何千万人にリテラシー向上のために接するのは難しい。そこでカギになるのが、我々が用意した材料や資料をベースに伝えてくれる人を増やすことだと思います。

「うんこお金ドリル」もただ耳目を引こうと飛びついたわけではありません。金融リテラシー・マップにある若年層の部分を、しっかり子供たちに伝えるための手段として取り組みました。

うんこお金ドリルと、つみたてNISA普及促進のイメージキャラ「つみたてワニーサ」
(画像=うんこお金ドリルと、つみたてNISA普及促進のイメージキャラ「つみたてワニーサ」)

あとは、高校や大学くらいになると、自分で学んだ学生たちが友達に教えることもあると思っていて、そういう効果も大事だと思っています。

──たしかに身の回りの人に教えてもらえると楽かもしれません。“誰が話すか”も重要ですね。

実はこのチームでは金融リテラシー向上以外にも、つみたてNISAの普及にも取り組んでいるのですが、金融機関等が呼びかけただけでは難しい。

そこで一番いいのは、自分と同じ目線で、自分でやってみた人の話です。金融庁がこれまでに実施してきた、つみたてNISAミートアップというイベントでも人気なのはブロガーさん達の体験談でした。 それこそNISA制度ができる前から、リーマンショックを乗り越えて積立投資やってきたような人が、「たしかに下がる時は下がるけど、長期でコツコツやれば大丈夫だよ」と自分目線で言ってくれると、積み立ての効果が感じられる。そうした人の言葉はやっぱり効きますよね。

夏休みに家庭でできること 企業が会社でできること

──夏休みに、親子で、家庭で「お金の教育」としてできることには何があるでしょうか?

子供と一緒に買い物に行った時に、値段のことをきっかけにお金について話をしてみるのはどうでしょうか。そういった中で、金融庁から出しているアプリや教材をダウンロードしてみてもらえればと思います。

──厚切りジェイソンさんも「子供と日常的にお金の話をしたほうがいい」と新年のインタビュー取材の際におっしゃっていました。

厚切りジェイソンさんは、ちょうど数週間前に、私立豊島岡女子学園(東京・池袋)で金融庁の資料をテキストにして授業をしてくださいました。ご先方から、「使ってもいいか」とお問い合わせいただいて、私たちも授業を見学させてもらいました。ほかにも我々が出している資料を社内や校内で使いたいと言ってくださるところもありますが、出所を明示していただければどんどん使っていただけたら、というスタンスです。

──学生や子供たちは学校で教えたり伝えたりできますが、大人は難しいですよね。

たしかに金融庁だけではアプローチが難しいところがありますね。だから全国銀行協会ですとか、証券業協会等という金融広報中央委員会に参加する関係団体やその所属企業も一緒になって金融リテラシーの普及・向上に努めていますが、それでもフルカバーするのは難しいです。

──それはメディアも一緒で、マネーメディアが記事を出していて、本当に読んで欲しい、読むべき人にアクセスしてもらうのはとても難しいように思います。

まさにその通りで、いろんなきっかけでお金について考えた時、自発的にリカレント教育(編注:繰り返し、循環の意。社会に出て学校教育か離れた後、必要なタイミングで再び教育を受け、仕事と教育を繰り返すこと)に取り組まれる方はともかく、そういう方ばかりではありません。またいろんなアプローチをしても、リーチできていない方も多く、どうやってリーチするかが課題です。

その中で重要だと思っているのが職域。職場でのお金の教育です。中小企業の経営者に、従業員への教育をしてもらいたいという話をすると、多くの経営者はそれが大事だと分かりつつも「うちは余裕がないから無理」となってしまう。

ただ従業員のフィナンシャルヘルス(個人・家計の金融面での健全性)は会社にとっても重要で、お金の心配があると体調も悪くなったり、生産性も下がったりします。お金の話は、家庭や個人の問題だと切り離すこともできますが、会社のマネジメントにも跳ね返ってきますよと。だから会社で従業員が金融リテラシーを学ぶ機会があるといいなと考えています。金融広報中央委員会では“マネビタ”という社会人の方にもご覧いただけ易い動画講座を公表しており、そうしたものをご活用いただく機会を作る取り組みもしたいですね。

取材・濱田 優(dメニューマネー編集長)
編集/写真・dメニューマネー編集部

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