イギリスでは早期金融教育を重視しており、小学校(4~11歳)からお金の教育を始めます。英国在住の筆者の子育て経験から、具体的にどのような金融教育が行われているのかについてレポートします。
【特集・親子で考える「お金」】
・1 なぜ「うんこお金ドリル」が生まれたのか?金融庁インタビュー
・2 イギリスでは小学生にお金をこう教えている 在住ライターレポート
・3 人気FPコンビが伝授!子供が身につけるべき「お金の考え方」
・4 米国在住20年の筆者が見た、アメリカのお金の教育2つの特徴」
・5 フェラーリ、ディズニー株をプレゼント?「お金持ちの金融教育」
今年7月に我が子が卒業した学校ではこんな授業が行われていた
英国のほとんどの小学校では、金融教育は必須ではありませんが、数学(算数)のカリキュラムにお金に関する学習を組み込んでいます。
カリキュラムは子供の学年や学校の方針により異なりますが、小学生が理解しやすいように、お金の価値や計算、使い方、貯金、カードの利用法などを教えます。
筆者の子供は今年7月、ロンドンから南西部へ車で約2時間、人口10万人程の観光都市・サマーセットの公立小学校を卒業したばかりです。その学校は全生徒数が350人前後の小さな学校で、次のような授業が行われていました。
ロールプレイングでお金の知識と経験を養う
低学年では「お店屋さんごっこ」をしてお金の使い方と稼ぎ方を学びます。中学年は「銀行ごっこ」で金融商品や貯蓄について学びます。
そして、高学年はビジネス商談のロールプレイング。売り手と買い手のグループに分かれ、売り手は商品・サービスの企画から営業、買い手は予算編成から価格交渉まで、お金の知識や経験とともにビジネススキルについても学びます。
こうした学校の取り組みの中でも、全学年を通して子供たちに人気が高いのは、「ゴールデン貯金」という仕組みです。
これは、人に親切にする、先生の話を静かに聞く、目標を達成する(例:1ヵ月で本を5冊読む)といった、褒められるべき行いをした生徒がもらえる「ゴールデン・オブ・ザ・ウィーク(今週の金賞)」というご褒美制度を利用した「貯金ごっこ」。
選ばれた子供はご褒美として、段ボール紙などで作ったコインを受け取り、それを絵に描いたブタの貯金箱に貼り付けて「貯金」します。
ブタの貯金箱の絵は壁に貼り出されているため、誰がいくら貯金しているのか(たくさん善い行いをしているのか)が一目で分かり、モチベーションアップにもつながります。一番たくさん貯金した生徒は、学期末に賞品をもらえます。
「3+2」ではなく「3ポンド+2ポンド」と数学の授業でお金を意識させる
数学の授業にお金を使った問題を多く取り入れているのも、英国の金融教育の特徴の一つです。
たとえば、数の数え方の学習にお金を使ったり、「3+2」という計算問題に「3ポンド+2ポンド」とお金の単位をしたり。たし算やひき算、文章問題などを介して、お金を身近に感じさせる工夫を凝らしています。
子供にお金を増やさせるプロジェクト「グロー・ユア・1ポンド・チャレンジ」
中・高学年になると、金融教育に「お金を増やす」という要素が加わり、子どもたちはさまざまなプロジェクトに挑戦します。
定番の「グロー・ユア・1ポンド・チャレンジ (Grow Your £1 Challenge)」は、学校から支給された1ポンド(約161円)を元手に、決められた期間内(例:2ヵ月間)にできるだけお金を増やすというプロジェクトです。
増やす方法にルールはありません。筆者の子どもは1ポンド分の材料で作ったカップケーキやカード、アクセサリーなどを学校や公園で販売して、20ポンド(約3,226円)に増やしました。ちなみに利益は学校に寄付され、施設・設備の拡充などに利用されます。
アプリとデビットカードを利用して家庭でも金融教育
近年、家庭でできる金融教育ツールとして利用が広がっているのは、「子供用のお小遣いアプリ」と「デビットカード」です。
いずれも保護者は収支明細にアクセスしたり、支出の限度額を設定できたりするため、子供の収支を監視すると同時にお金の使い方を学ばせられます。
筆者もお小遣いは子供名義のデビットカード口座に振り込み、専用アプリでお金の管理をさせています。
しかし、子供任せにするのではなく、取引履歴や残高をこまめにチェックし、無駄遣いが多いと感じる時には「本当に必要なものか」について話し合ったり、計画的にお金を使えたら褒めたりしています。
親子で一緒に金融リテラシーをつける
このように、英国の子供は小学校を卒業するまでにお金についての基礎知識を学び、セカンダリースクール(11~16歳)では資産運用や老後資金といったより複雑な知識を習得します。子供の学習をサポートする上で、親にもある程度の金融リテラシーが求められるため、親子で一緒にお金について勉強したり、オープンに話し合う機会にもなります。
文・アレン琴子(英国在住のフリーライター)
編集・濱田 優(dメニューマネー編集長)
画像・英国の金融教育の様子Young Enterpriseレポートより(イメージ写真です)
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